グスタフ・マーラー 交響曲第7番 ホ短調 (1905年)

2005年4月 7日 00:23 | CLASSICS

 前回、私の最もお気に入りの第6のお話をしました。第6交響曲は、その構成や形式自体はかなり正統な交響曲を意識したものでしたが、この第7では再び第5と同じ5楽章形式となります。正直第7は結構難しい曲です。第5のアダージェットのような夢見るようなフレーズはないし、終始現代音楽風のわかりにくさ、とっつきにくさがつきまといます。まかり間違って、これまでマーラーを聴かれたことがない方が、この文章を読まれて、第7から入ってしまったらどうしようかと迷ったのですが、真にマーラーをあるいは彼のあの時代への刻印を理解するためには、何番目かには乗り越えるべき道でもあると心を決めてお話します。(JAZZのバド・パウエルとは違った意味で・・・)

 第6の完成前に着手したと思われるこの交響曲は、第2、第4楽章が「夜の音楽(Nachtmusic)」と名づけられており、その言葉どおりに受け止め、あるいはアルマの言葉を引用すれば「ドイツロマン派の幻想」ともとれる80分にもおよぶ幻想交響曲でもあります。しかし、アルマ自体はもはやこの曲を真に理解することはなかったのでしょう。この曲は、実は例のハンマーで打ち倒される第6(その悲劇性にもかかわらず)のコインの裏側のような曲なのです。

 テノール・ホルンというブラスバンドくらいでしか用いないような楽器による主題で始まる第一楽章からすでに、アイロニーと引用に溢れ、「音楽のための音楽」と思わせながら、実は本来の彼の本性を表現しているように思われます。このテノール・ホルンによる序章主題は、聞きなれないだけに異様な雰囲気をかもし出してはいるのですが、何度か聞き込むうちに、まるでオペラのバリトンのように腰の据わったいい音に聞こえてきます。相変わらず行進曲風のなだれ込みや、カウベルによる小休止も用意されていますが、この曲で新しく彼のオーケストレーションに加わったのは、第4楽章で使われているマンドリンとギターです。夜中に幽霊が飛び交うような奇妙な美しさの第3楽章を経て、第4楽章は13分という比較的短い(!)楽章ですが、この音色にはまってしまうと、もうマーラー病も相当根深いもの。

 そして、終楽章は初演時から物議をかもした、いきなりのドンちゃん騒ぎです。ギターやマンドリンをフューチャーしつつ、第4楽章が穏やかにあるいは死に絶えるように終えた後、夜の就寝中にいきなり素っ裸で太陽がさんさんと輝く真昼間の大通りに引っ張り出されたような終楽章、ワグナーを思わせるティンパニの連打とトランペットの主題で始まるこの楽章は何の屈託もなく勝利を宣言しているかのように思わせるのですが、それは突然別のテーマに取って代わり、この勝利への確信がかりそめのものである事が早々に露呈してしまいます。

 これはとりもなおさず、通常であれば例の「苦悩を超えて歓喜へ」であるはずの古典的フレーズが、100年後の20世紀初頭にはすでに機能しないことを明言しており、世紀末の気分を引きずり、また啓蒙主義の未来が決してバラ色ではないことの証明、あるいは、ニーチェと同じようにマーラーもまた、真実を語ろうとすれば声が上ずり、ひっくり返ってしまうような、そんな時代に差しかかろうとしていたのでしょう。それが彼をして「現代交響曲の父」と呼ばれる所以なのかもしれません。単独で聞けば、構築性に富み魅力的なこの楽章、この虚構のハッピーエンドについて、T・W・アドルノの「マーラー 音楽観相学から引用してみましょう。

「伝統の形式には、まだハッピーエンドが作りつけられていたし、慣習が個々人の責任を免除する限りは、人々の目を潜り抜けることも出来た。しかし、冗談が真剣さに席を譲れば、ハッピーエンドは機能しなくなるのである。」

[CD聞いてみてちょ!]
■インバル指揮 フランクフルト放送交響楽団(1987)
東京都交響楽団の客演指揮の経歴もある現代のマーラー指揮者インバルが、長年主席指揮者として引き連れたフランクフルト響との録音がこのアルバムです。この曲は先にもお話したように複雑で構築的であり、バーンスタインなどの情念派よりもこのインバルやブーレーズのような現代的な、いわゆる技巧派の方が適しているでしょう。徹底したスコアの読み、転調やリズムの切り替えなど、細部へのこだわりを感じる名演です。その分、BGMには適していないかもしれませんね。ちなみに現在、 テンシュテット指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団とラトル指揮バーミンガム市交響楽団の2枚を入手予定です。

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