グスタフ・マーラー 交響曲 第9番 ニ長調 (1910年)

2005年5月22日 22:34 | CLASSICS

 前回お話したのが9番目の交響曲で「大地の歌」。で、今回が10番目の「第9番」交響曲です。この曲も、大地の歌と同じくマーラーの没後、1912年6 月に愛弟子ワルター指揮ウィーンフィルによって行われました。ですから、初演後も楽譜に手を入れたマーラーの性格からすれば、もしかすれば今とは違った曲になったかもしれません。しかしながら、マーラーが全楽章の総譜を書き上げた最後の交響曲であり、(次の遺作となった第10交響曲は全5楽章のうち第一、第二楽章のみマーラの総譜あり)一部評論家の間では、交響曲作家マーラの最高傑作であり、ベートーベン以降の交響曲の歴史の最後を飾る曲であるとも言われています。

 バーンスタインが心臓の不整脈にたとえたチェロとホルンとの間で呼び交わされるリズム動機で始まる第一楽章は、「イ音のフラジョレット」で始まった第一交響曲と対置で置かれ、あたかも彼の創作の完結のようにも思えます。もちろん、本人の創作意欲は、これを区切りになどとは思いもしなかったでしょうが・・・そして、基本的にはソナタ形式であるにもかかわらず、その構造の根本を覆すような、転調のない展開、というよりはいわゆる「主題変形の技法」という形で、とうとうソナタ形式自体を打ち壊してしまいます。この30分近い第一楽章だけをとっても、マーラ音楽の全てが凝縮されていると言っても過言ではなく、紆余曲折をへて彼がたどり着いた彼の「高み」であることは間違いないでしょう。

 郷愁を呼び起こすような、オーストリアの田舎のワルツ「レントラー風」の第二楽章と、ロンドと題されたアイロニーに溢れた第三楽章を経て、いよいよ最終楽章アダージョになります。

 そう思えば、本当にそう思えてしまうのですが、(妙な言い回しではあります)マーラーの人生そのものを振り返るような、人が人と織り成す人生の美しさや悲しさ、そしてつかの間の喜びや残るはかなさが、全弦楽器によって奏でられるような序奏から、最後のドラマは始まります。なんと言う美しさなのでしょう。この楽章を聞けば、リアリティや深みにおいて、例の第5のアダージェットはただのCMソングにしか思えない。本当にそれほどに胸にしみるというより、音符の姿をした天使たちが心のひだのひとつひとつにまとわりつきそっと触れては、悲しげに消えゆくようなそんな気がします。美しいことというのは、実は美しいことでありまた美しくないことでもあるというような、つまり思考を超え感情や感覚をも超えて、たとえば人のまなざしというものは常に美しいものなのだというような、ロジックでは語れない絶対的なものを感じずにはいられません。

 曲は進み、弦楽器だけの終盤に入るのですが、徐々に楽器の数が減ってゆき、そしてリズムも本当に死に絶えるようにゆっくりと、またゆっくりと進んでゆきます。一音一音、いや音符の狭間の無音さえ意味を持つような透明な時間がゆっくりと流れ、そして消えゆくように曲が終わります。この世の創作されたものは、大体において荘厳なフィナーレを持ちます。(ハリウッド風映画などは真骨頂!)しかし、生きとし生けるものの最後とは、本来このような終わりではなかったのでしょうか?交響曲という、芸術家による音楽表現がここに確かに終焉し、時代は無調音楽へと入って行きます。

[CD聞いてみてちょ]
■レナード・バーンスタイン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1979)
マーラを世に知らしめたバーンスタインは、当時カラヤンと人気を二分する指揮者でした。そして、帝王カラヤンの君臨するベルリンフィルに乗り込んで録音されたのがこのアルバム。翌週指揮台に立ったカラヤンがいつになくよく鳴るオケに驚き、「私の前に、誰が振ったんだ?」と聞き、誰かが「バーンスタインです」と答えると、一瞬いやな顔をしながら、「そうか、彼の練習指揮者としての腕前はまあまあだな。」と答え、そして二度とバーンスタインをその指揮台には立たせなかったといういわくつきの録音です。使徒として心の、いや魂のこもった名演。最初の1枚には、やはりこれですかね。

■ジョン・バルビローリ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1964)
第6交響曲でもご紹介したバルビローリがベルリン・フィルを振った一枚です。バーンスタイン盤とはまた違う、まろやかさに溢れたバルビローリと重厚なベルリンフィルとの織り成す至高の名演です。音楽というよりは映像表現に近く、あたかも恋人たちがこの世の最後の逢瀬(古い言葉ですね〜)を重ねるように一音一音が進んでゆきます。「交響曲というものがこういう形で終わってしまってもいいんだ!悔いはない!」と思わせてしまうほどの名演。自称ロマンチストなあなたに!

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