2005.10.23

ART

「アルノルフィニ夫妻」 ヤン・ファン・エイク(1434)

一組の男女の全身肖像画。私のお気に入りの絵画をご案内するこのコーナー。(いつから出来たの?)今日は以前、某テレビ番組でも取り上げられた、15世紀オランダ(ネーデルラント)・ゴシックの画家、ヤン・ファン・エイクの描いた一枚です。わずか縦82cm、横60cmのこの絵は、実は驚くほどの緻密さで描かれています。たとえば二人の間の絶妙な空間の中央にある、壁に欠けられた凸面鏡。直径はわずか10cmほどのこの部分には、回りにははっきりとキリストの生涯の10の場面が描かれ、中央には主人公たちの後姿とともに、絵のこちら側、出入り口らしき辺りにたたずむ公証人とエイク自身も描かれているのです。


art051023.jpg
脱ぎ捨てられた2足のサンダルは聖なる結婚の場所を暗示し、また窓際に置かれたオレンジは、繁殖と原罪をあらわすそうです。寝台、1本だけ燃えるロウソク。忠実の象徴である足元の子犬。二人の神聖な門出の儀式を描いたエイクの代表的な一枚です。ファン・エイクはゴシックに光を持ち込んだ画家ですが、この絵では左手の窓から差す柔らかな陽光ではなく、二人の登場人物が明らかに輝きをもって描かれています。驚くほどの緻密さの上に、表現された大胆さ。まるでGEとウェルチのようです。緻密に把握した上で省略するのと、最初からアバウトにしか捕らえないのでは、全く違った結果になりますよね。彼が描きあげたのは、それまでの目に映るゴシック写実ではなく、彼の卓越した五感が捉え解釈したものが、その通りにしかも緻密さから出発して描かれています。油絵の技法にも大きな進歩をもたらした彼の手法は、その後の後期ゴシックへ、また一方ではフェルメールのような密やかに美しい光の世界へとつながってゆきます。はー、でも絵画って、いいですよねぇ・・・

INDEX

CATEGORY

ARCHIVE