2005.12.25

ART

一枚の絵画・・・[ベリーニの青](ベネツィア・ルネサンスの夜明け)

「牧場の聖母」ジョヴァンニ・ベリーニ(1500)

今日は今年最後(?)となる芝刈りに行ってきました。雲ひとつなく、風もなく、絶好のゴルフ日和ではありましたが、スコアのほうは・・・人間は進歩する生き物だと思っていましたが・・・トホホ。さてさて、気を取り直して「BOSSのお勧め絵画」コーナーです。

絵画という表現手段を新たな段階へと導き、西洋絵画の歴史に大きな影響力を与えたのが、北イタリアはヴェネツィアの画家ジョヴァンニ・ベリーニでした。それまでの絵画に見られた対象の構成や構造の解明ではなく、彼独特の光と愛で対象を捉え表現します。彼にとって光は科学ではなく「神秘的な熱」でした。また自然をはじめ、生きとし生けるもの全てに対して、感受性豊かな彼の溢れんばかりの愛をもって表現されています。


ベリーニ.jpg
前回と同じく、青の聖母子像です。形態よりも色彩を、構築性よりも自然な絵姿を選んだ彼は、常に形態を優先するルネサンスの中心地フィレンツェに対抗するものでした。この絵の青は、ダーフィットのように鮮やかではありません。それは、描かれている対象全てに対して、包み込むような光、彼と彼の作品を見る私たち全てがもつ対象への愛が熱を放ち、光となり、この母子を柔らかく包み込んでいるからなのです。この絵は、決して私たちの身の回りの自然の描写、つまりは風景画ではありません。描かれているのはまぎれもないイエス・キリストと聖母マリア。しかし、彼は愛に溢れた光に照らしながら、かつ微妙な色彩のバランスをとることによって、その象徴性と親和性の調和を図ります。私たちの目に、この二人がとても近しい人々に写るのは、そんな彼の真骨頂なのです。

彼女の青と赤の衣は、実は空と大地という自然の代弁です。母なる「自然」に抱かれた幼子イエス。そして誰しも母親を持ち、また彼女たちがどれほど我が子に対して、つまり私たちに対して「謙譲」であるかを訴えかけてきます。背景、特に二人の向かって右側に描かれるのは、当時どこにでもあったヴェネツィアの風景、あたりまえのありきたりの自然です。しかし左側には死の象徴としてカラスが描かれ、その下では蛇と白鷲が善と悪を象徴しながら戦いを繰り広げています。その二つの象徴の中心に安定した形で描かれる一組の母子は、夢と現実、生と死、善と悪などの対立するものすべてはこの自然の上で起こり、すべての中心が尊びと謙譲、つまり「真の愛のカタチ」であることをしっかりと伝えます。彼には他にも「神々の祝祭」という傑作がありますが、愛よりいでし光により鮮やかに神々が描かれています。サイトのデザインも、ここまでの思い込められるといいのですが・・・

INDEX

CATEGORY

ARCHIVE