2006.05.09

COLUMN

「情報交換と宇宙人」

Workin' (1956)

火曜日です。朝からあれこれ対応に追われて、あっという間の数時間。昼からは同友会の副幹事長が集まっての例会ミーティング。林さん、岡崎さん、お疲れ様でした。いい例会にしたいですね。今年一年、よろしくお願いいたします。その後、客先を訪問してサーバの調整をいろいろ。今日もあっという間に暮れて行くのでありました。

最近、本当に社内での情報交換が盛んになりました。それもこれも、体制を見直し、権限委譲し、それぞれの責任と裁量権を明確にしたからでしょうか? みんなすごく自主的に動いているのがわかります。スタッフ・ブログではふざけてばかりの連中ですが、仕事の会話は真剣そのもの。まあ、常に今が正しいとは信じることなく、新しい何かを探し続けて行きたいと、忙しいさなかにもトホホ社長は思ったのでありました。

昨日のニュースで恐縮ですが、イギリスの国防省が4年間をかけた調査の結果、「地球外生命の存在を裏付ける証拠はなかった」とする極秘報告書を6年前に作成していたそうです。この極秘報告書のタイトルは「英国における未確認飛行現象」。400ページにもわたるこの報告書は極秘扱いだったそうですが、「情報公開法」なるものによって白日の元にさらされたらしいのです。

報告書では、数多くのUFOに関する目撃証言を調査した結果、「自然界の物理的な力以外に敵対するような現象が存在する証拠はみられない。危険を引き起こすような確たる物体が存在しているという証拠もなかった。」とされ、「UFO目撃は自然現象による錯覚」と結論づけられているそうです。このニュースを聞いて憤慨したのは、矢追さんだけではないと思います。でも、ご心配なく。だってこれって宇宙船目撃の話だけでしょう? 宇宙人そのものの存在の可能性には触れてないし・・・ほっと胸をなでおろした人たちも多くいたのではないでしょうか? 例えば私のように、はるかバルタン星からやってきたものの、戻ることも出来ずに、すでに居心地のいいこの地球に住み着いてしまった宇宙人にとって・・・うっしっし。

さて急な展開ですが、「マイルスよもやま話」の第10話です。

このジャズ・シリーズは、ブログのネタに事欠くトホホ社長が、所有していてもなかなか通して聴く機会のないジャズ・アルバムをこれを期に一気に聴いてしまい、アーティストのアルファベット順に、そして録音順に、好き勝手なことを書くというのがテーマになっています。で、普通はありえないのですが、マイルス様のように沢山のアルバムを所有してしまうと、たまに困ったことが起こります。つまり、1枚のアルバムに異なった時期の録音が入っていて、それらが別のアルバムと入れ子状態になっている場合です。まあ、それでも一般的な順序というのは大概決まっているのですが、第10話としてお話しするアルバムのチョイスではちょっと考え込んでしまいました。

一般論としては、前回の「The Musing・・・」の次に来る公式版は「Miles Davis And Milt Jackson」で、これは未所有。次がCBS版「Round About Midnight」で、お次がPrestige別れの5部作「Miles」「Workin'」「Steamin'」「Relaxin'」「Cockin'」となるのですが、個人的にはどうもこの5部作よりも「Round」がより完成形であるというか、後に回してしかるべき気がして仕方がない。正確に録音の日時までたどってみると・・・

Round About Midnight:1955.10.26,1956.6.5,1956.9.10

Miles:1955.11.16

Workin':1956.5.11,1956.10.26

Steamin':1956.5.11,1956.10.26

Relaxin':1956.5.11,1956.10.26

Cockin':1956.10.26

なのですが、とにかく独断と偏見により、「Round」より先に現在進行形4部作をやります、有無は言わせません、はい。ということで、今夜は4部作の1作目「Workin'」です。

前作の「Miles」(未所有)が、実質のマイルスバンドのデビュー作。そして、前掲のデータをごらんいただいての通り、その後の4部作は1956年の5月と半年後の10月のわずか2日間の録音が4枚に分散されていることがわかります。しかもほとんどがワンテイクだったらしいのです。なぜそんなことになったのか。実は「Miles」を録音する4ヶ月ほど前の、ニューポート・ジャズ・フェスティバルでメジャーデビューを果たしはマイルスさまに、音楽界大手のCBSコロンビアから専属契約の話が舞い込んでくる。Blue NoteやPrestigeはやくざなJazzレーベル、横綱と小結以上の違いがあります。しかし当時マイルスはPrestigeとの契約期間中。いくらギャラが少ないとはいえ、契約は契約です。それでマイルス様は考えた。「ナイショでやればいいだろう・・・」ええ、いいのです、だってマイルス様です、帝王です、マイルスが法です、掟です。

で、55年10月にはボブにはナイショでCBSのスタジオ入りしちゃうんですね〜。とりあえず、おいしい話にはつば付けとこうって感じでしょうか・・・さすが帝王、手が早い。で、プレステージに戻って、一気に契約分を消化しちゃう。ただですよ、「5月の連休を利用して・・・」なんてせこいことは考えない、さすがは帝王です。実は56年5月の段階では、まだまだバンドとしてのまとまりに欠けていた。特にロリンズのピンチヒッター、コルトレーンの「へたくそテナー」ぶりは知る人ぞ知る聴いた人なら誰でもわかるという、泣く子も黙るとんでもない状態でした。そこで、マイルス様考えた。とりあえず5月に半分くらい録音。その後、ステージという名のマイルス道場でバンド、特にコルちゃんを鍛え上げる。そして「立鳥、後を濁さぬ」ようにと、そこそこのレベルでPrestigeでの録音を終える。そうすりゃ、次のCBSではスタンバイOKという具合ですか・・・さすが、小賢しい、いや賢い。帝王ですから・・・

で、本題の「Workin'」です。まずはPrestigeお特異(得意ではないという意味)のジャケット評から。・・・・・・・・・・・・・んなんじゃーこりゃー・・・(絶句)道路工事のおっちゃんが、ヘルメット脱いでちょっと一服・・・ちゃいまんがな! もう! マイルス様の後ろのほうに見えるロードローラー、一体なんなんでしょう。だから「Workin'」って、Prestigeさん! たのんまっせ!

気を取り直して、1曲目はガーランドの美しいアルペジオで始まる「It Never Entered My Mind」。マイルス様の優しいミュートが折り重なるように歌います。下手テナーなしのワンホーンです。この時期、マイルス様の右腕は、明らかにコルトレーンではなくガーランドでした。それは2曲目の「Four」ですぐに露呈します。コルトレーン、下手です。とにかく下手です。「したて」ではありません、「へた」と読みます。確かにロリンズにはないマイルス・トーンとマッチングすべき微妙な音色の気配はあります。が、いかんせん下手。本当にまとまりとしても微妙です。でも、ここで「ちみはやっぱクビ!」と言わなかったマイルス様は偉い。こんな下手くそフレーズの中に、後年になって完成されるコルトレーン・サウンドを聞き取っていたのですから・・・そうです、マイルス様は思いのほか気が長い方なのです。これからは帝王様のことを「家康さま」と呼びましょう。いや、やめます。やはりマイルス様、帝王様がいいですね〜。

6曲目の「Ahmad's Blues」は、知る人ぞ知るアーマッド・ジャマルのオリジナル曲なのですが、これをなんとホーンレスのピアノ・トリオでやってる。マイルスのリーダーアルバムですよ、これって。で、なんでジャマルなのかというと、当時マイルス様はジャマルの間の取り方とかフレージングをお勉強してたわけです。で、自分のバンドのリズム隊でやってみた。アレンジャー・マイルスのデビューとでも言いましょうか。その後の彼の曲作りというか演奏や編曲を聴いていると、

[マイルス] X [ジャマル係数] X [ギル係数] ÷ [オリジナルバンド]

という公式が成り立つのです。まあ、「E=MC2」みたいなものでしょうか? そうそう60年代になると、これにテオ・マジックという荒業が加わるのですが・・・

で、このアルバム、進行形4部作の中では最も評価が低いのですが、まあそういい悪いと目くじら立てずに、マイルス・グループの確立期の真の「現在進行形」の一枚として、リラックスして聴きましょう。しかも、コルトレーン、下手だし・・・(もういいって?)だって60年代にはいれば、もう緊張に次ぐ緊張の、怒涛の100連発に否応なしに突入してしまうのですから・・・一般のJAZZファンの方が帝王さまをトレースするにはこの辺からがよろしいようで・・・

Workin.jpg

ここで視聴できますよ!

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