2006.09.08

COLUMN

「夢をありがとう!」

先月の27日に、「ナカちゃん」の愛称で呼ばれていた徳島県の那賀川に住み着いた一頭のアゴヒゲアザラシが死んでしまいました。いち徳島県人として、とても残念なニュースだったのですが、ちょっと驚いたというか憤慨したのは、「ナカちゃん死亡」の報を受けた阿南市の行政連絡会が「はく製化」を検討しているということでした。

皆さんはご存じないかもしれませんが、ナカちゃんは阿南市から「特別名誉市民」とされていました。つまり住民の一人だったのです。客観的にみてアザラシが市民に該当するかどうかなんてことを議論するつもりはありませんし、それはそれで暖かい思いを感じてみていました。そんなナカちゃんが「死んだらはく製」というのは、いかがなものなのでしょう?だって、市民でしょ?人間じゃないけど、人みたいなものでしょう?死んではく製にされる人間っているのですか?恋しい人が死んじゃったからって、はく製にして飾ってる人っています?それって、あきらかに「猟奇的発想」ではないでしょうか?愛してたといいながら・・・その愛とは所詮、自己に向けられた自己愛でしかなく、その対象を失ったことに対して、ちゃんと整理をつけずに別の代替を用意するって、明らかに自己欺瞞ではないのでしょうか?

世の中、本当にあわただしく、あるいはとげとげしく流れてゆきます。マスコミやオピニオン・リーダーに追い立てられるように、「立ち止まっちゃいけない」という脅迫の言葉をお祈りのように唱えながら、せわしない日々を強要されている。そんな私たちが持つことの出来た、ひと時の穏やかでゆっくりと流れる幸せな時間。それが「ナカちゃん」という存在、ひとつの「夢」であったのではないでしょうか?もしそうなら、リアルに可視化して展示するなんて馬鹿げたことはやめて、それぞれの心の中に、いつまでも密やかに生き続けてほしいし、そうするのは行政でもマスコミでもなく、私たち一人一人の心の問題だと思うんです。

僕はナカちゃんに伝えたい。「ナカちゃん、夢をありがとう!」と・・・皆さんは、どう思われますか?

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