2007.07.18

万葉の旅

うつせみの命を惜しみ波に濡れ伊良湖の島の玉藻苅り食(お)す  麻続王

麻続王(おみのおおきみ)が罪を得て伊勢の伊良湖に流された際に、里人に 「打ち麻を麻続王海人なれや伊良虞(いらご)の島の玉藻かります」(麻続の王は海人であるのか、海人でないのに伊良湖の島の海藻を苅って居られる。おいたわしいことだ)と語り掛けられ、感傷した王がこたえた歌です。

「この世の命が惜しさに私は波にぬれてこの伊良湖の島の海藻を刈って食べているのです。」

かつては都で優雅な日々を送っていた王が、これ以上先はないというような辺境の岬に流された。しかし王はそこで、純朴な里人の心に触れ、人としての大切なものを学んだのかもしれません。いずれにしてもその身の上を感傷的に歌っていることが、「命を惜しみ波に濡れ」という部分に、しみじみと現れています。人生の悲哀を感じる、悲しい歌です。

INDEX

CATEGORY

ARCHIVE