2007.08.09

COLUMN

「ある朝、目覚めると、平和が壊れていた・・・」

今日は長崎が62回目の原爆の日を迎え、市内の平和公園で平和祈念式典が営まれました。原爆死没者名簿に記載された方々は、広島では25万人、長崎でも14万人を超えたそうです。自称、世界の警察アメリカ人にリトルボーイとファットマンという、おちゃらけた名前をつけられた5トンほどのたったふたつの爆弾が、計40万人もの人たち、それもほとんどが非戦闘員である人たちの命を奪いました。これはハリウッド映画とか、訳のわからないSF小説の話ではありません。62年前に起こった事実です。

先日の6日夜、某民放の深夜の報道番組に田中なんとかという若い切れ目の女優が出てて、頭の悪そうな女性アナウンサーとの対談が放映されていました。なんでも今年、広島原爆をテーマにした映画に出演したとかで、家族で広島の平和記念資料館を訪れた時の模様を真剣に語っていました。

「映画つくりの為にだけ行くのではなく、家族の一人として、ひとりの娘として訪れたかった」とのこと。うん、なかなかいいこと言っているではないですか。(おじさん、喜ぶ。ここらあたりまでは・・・)

で、母親に聞いたそうです。「お母さんは平和の為に何ができる?」(うん、いい質問だ!オチがメッセージだな!?)で、彼女の母が答えたそうです。「あなた方、家族を守ることしかできない。」で、感心するあほ面アナウンサー。スーパーには「家族を守る」の文字が・・・。

まあ、もっともな話です。彼女は26歳ですから、お母さんは40歳台から50歳台くらいでしょうか?戦後生まれの普通の家庭を守る主婦としては、ごく当たり前の答えです。

ただですね(出た!)、この報道番組が「戦争特集」と銘打っている以上、こんなちんけなコメントは、明らかにカットすべきではないでしょうか?しかもスーパーまで入れてしまってて・・・。

戦場に行った兵士たちはみな、「家族を守るため、祖国を守るため」に戦って死んでいったんですよ!!!

母親が家族を守ろうとする。これは当たり前のことです。で、果たしてそれで戦争が防げると言うのでしょうか?そういう思いを皆が抱けば、本当の平和が保たれるとでも言うのでしょうか?意味不明・・・。

例えば、何かを守る為にであっても決して「武力」を行使してはいけない。それが戦争をなくすための手段のひとつなのではないでしょうか?

「自分の家族を守る」それが結論では、例えば「他の誰かを犠牲にしてでも」とか「せめて自分たちだけは」といった矮小なものに落ちて行きはしないでしょうか?誰かの幸せ、誰かの平和は、誰かの努力、誰かの犠牲の上にしか保てない、平均台の上の一瞬のバランスの積み重ねなのではないでしょうか?あるいは、もう一回マルクスに戻りますか?

そんな「平和ボケ」したコメントを特集で編集もせずたれ流し、逆にスーパーまでつけて視聴者を洗脳しようとしているということは、関係者自身が「平和ボケ」の100乗だということの証です。

彼女を責めるつもりはありません。地方都市に生まれ育ち、中学生からモデルの仕事。なんとか高校を卒業して上京後は、仕事仕事の毎日だったでしょう。そんな彼女が、「ヒロシマ」の意味や「平和の意味」をまともに答えられなくたってしょうがない。平和記念資料館を始めて訪れたのも無理はない。いままでは、拝金主義のビジネス街で、寝る間も惜しんで東奔西走してたのですから。

責めるべきはやはり、この番組のディレクターでしょう。そんなことでお茶を濁そうとするから、マスコミはますます軽く見られてしまうんですよ!聞いてます?聞いてないか・・・^_^;

もちろん、私も彼女の代わりにちゃんと語ることはできません。ですから、皆さんに語りもしません。一人の平和が国家の平和にはなりえないし、国家の平和が世界の平和にもなりえない。そんなことは数千年の人類の歴史が伝えています。

「平和」とは一体なんなのか?私たちはそれぞれ、どうすればいいのか?年に一度は、そういうことを真剣に考えてみるべきなのでしょうねぇ。

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