2008.02.13

ART

一枚の絵画・・・「ゴシックの真髄」

「受胎告知」 シモネ・マルティーニ (1333)

ジョットに始まった西洋絵画、そしてゴシック様式ですが、ビザンティンからの正統な継承者としては、ジョットよりもこのマルティーニとなります。そういう意味では、ジョットは異端でもあり、またマルティーニはゴシックなのかビザンティンの発展型なのかという疑問も出てきます。

しかし、ビザンティンの持つ超越的な精神性の重視に加え、ジョットの持つ革新的空間描写やフランス・ゴシックの影響を感じさせる点、そして何よりも優雅な形態や自由に展開し、ややもすれば懲りすぎとも取れるマルティーニの技巧は、まさしくゴシックそのものであり、実は彼は「イタリア・ゴシック最高の画家」と呼ばれています。

今日の一枚は、フィレンツェのウフィッツィ美術館に納められている「受胎告知」です。

天の象徴である青一色の衣をまとい、告知にたじろぐ聖母マリア。それを告げる天使ガブリエルは黄金色に輝き、天上の存在であることを示しています。二人はしっかりと地に足をつけており、その存在は私たちの隣のものであると思わせながら同時に、その優雅さによってこの世とは全く別の世界のものであることが知らされます。

受胎告知。大天使は、深遠なる眼差しでことの重大さを告げ、マリアは驚きとともに感動の眼差しを天使に向けています。二人はまぶしいばかりに美しく、特にマリアの姿は見事なまでに流れるような曲線で描かれています。一瞬のなかの神秘的ともいえる優雅さが、ゴシックそのものであり、またこのような瞬間の劇的表現はマルティーニ作品の最大の特徴でもあります。

彼のこの洗練された画風は、当時のヨーロッパ中に影響を及ぼし、国際ゴシック様式へと昇華されてゆきます。

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