2008.04.26

万葉の旅

玉くしげ覆ふを安み明けて行かば君が名はあれど吾が名し惜しも  鏡大女

鏡大女が藤原鎌足に贈った歌です。

「夜が明ければ櫛笥(くしげ)の蓋を閉じるのも楽にはなりましょう。でも、夜が明けてからお帰りになれば人の知れるところとなりましょう。あなた様は浮名がたってもかまわぬでしょうが、私は困ってしまいます。どうか夜の明けぬうちにお帰りください。」という意味です。

この歌に対して、鎌足はこう歌って贈ります。

玉くしげ御室(みむろ)の山のさな蔓さ寝ずは遂にありがつましじ

「あなたはそうおっしゃるけれど、あなたとこうして寝ずにはいられないのです。」

二人の関係はさておき、なんと優雅でロマンティックなことでしょう。言ってることは素直な心のままを相手に伝えているのですが、今時のわけのわからない省略表現や絵文字なんかではない、気品とつつましさ、そこはかとなさを感じます。

ただの色恋にもこんな表現をしていた万葉の時代。わたしなんぞ、相当和歌を勉強しないと、人並みの会話も出来そうにありません。現代に生まれてよかったなぁ〜。万葉の頃も羨ましいけれど・・・。

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さな蔓の実です。まちゅ。

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