2009.08.13

CLASSICS

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル 「水上の音楽」(1723年)

夏のこの時期になると、全国津々浦々で花火大会が催されます。この花火大会、火災の危険もあるので会場はたいがい海や川、湖の辺といった水辺。これは真夏の清涼と言う意味でもうってつけの場所ですね。

現代の様にエアコンのなかった昔、舟遊びや水遊びは王侯貴族から庶民までの涼を求める催し物でした。今日ご紹介するヘンデルの「水上の音楽」は、18世紀初頭のイギリスの国王ジョージ1世がテムズ川で舟遊びをする際に演奏するために作曲されたものです。

これには有名な逸話があって、大バッハと同い年のヘンデルはもともとドイツザクセン州の生まれ。ハンブルク、イタリアを経て1710年に北ドイツにあったハノーファー王国の宮廷楽長になります。しかし旅で立ち寄ったイギリスが気に入ってしまい、宮廷楽長の地位はそのままにロンドンに移住してしまいます。

オペラやオラトリオを数多く作曲し、当時のアン王女の寵愛を受けますが、1914年に彼女が死去すると、なんと後継者となったのは、かつて彼が仕えていたハノーファー王国のゲオルク・ルートヴィヒでした。

ジョージ1世となってイギリスにやってきた国王に対して、「いやーこりゃまずいことになったわのぅ〜」と思ったかどうか、ヘンデルは新しい国王の舟遊びのために渾身の曲作りをします。それがこの「水上の音楽」というわけです。

ヘンデルの代表的な管弦楽作品の一つとして知られるこの曲は全21曲からなり、「追想」「組曲第一番 ヘ長調」「追想」「組曲第2番 ニ長調」「組曲第3番 ト長調」という、おおきく3つの組曲からなっています。

バッハが「音楽の父」よ呼ばれるのに対し、「音楽の母」と呼ばれるヘンデル。ナチュラル・ホルンやトランペットといった金管楽器の素朴な響きと、ヴィヴラートを排したシンプルかつエレガントな弦楽器の調べは、宮廷音楽としてのきらびやかさとともに、イギリスっぽい「雅」ともいえる色合い、そして舟遊びの陽気なさまを想像させます。

「メサイヤ」と同じく、ガーディナー指揮イギリス・バロック管弦楽団の演奏は、そういったこの曲の特色をそのままに伝える、ヘンデル・バロックらしい演奏となっています。

花火が上がったら、「玉屋〜!鍵屋〜!」で結構ですが、花火の前のひと時、この曲でわくわくしてみませんか?

ヘンデル:水上の音楽

おすすめ平均:5
5躍動感あふれる闊達な演奏
5☆☆☆決定盤☆☆☆
5最上の音楽
5夏の湯上り、夕涼みに聴きたい1枚

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