2009.09.23

COLUMN

八ッ場ダム

八ッ場ダムを巡る国交相の地元住民の方との意見交換は、予定通り開催されなかったようですね。というか、住民側がテーブルにつかなかった。話し合いにならないという理由でテーブルにつかないのはどうかとは思いますが、政府の描いたシナリオに対し既成事実を避けるという意味では致し方ないのかもしれません。半世紀にわたる歴史が一気に覆される痛みや苦しみは、私たち傍観者にはそう簡単に理解できるものではないでしょうし。

私の地元には「池田ダム」というダムがあります。私が大学生となりふるさとを離れる年に完成したこのダムは、毎年水不足で困っている香川県への用水供給を大きな目的のひとつとして作られました。

このダムが出来る前、目の前を流れる吉野川の水は清く澄み、川底を泳ぐ魚たちがよく見えていました。ダム完成後、私自身はふるさとを離れ、川遊びをすることもなくなったのですが、帰省したふるさとの川は青く濁り、かつての清らかな流れはもうそこにはありませんでした。

このダムによる地元の経済効果がどのくらいあったのかわかりません。そんなことを一切除けば、心情的には今からでも壊してしまえるのなら壊した方がいいと私は思います。

「日本列島改造論」という一冊の書籍が日本中を席捲し、コンクリートのダムや道路が、緑と自然の中に汚点のように点在する。すべての建設物が不要だとは言いませんが、そのことで支払ってしまった代償も大きかったように思います。

いきなり建設中止と宣言された「八ッ場ダム」。それが何の為に必要なのか?何をどのくらい犠牲しても、それは必要なことなのか?

マニフェスト通りということではなく、そういうことをやはりきちんと精査することが、未来の私たちの子孫のために必要でしょうね。

木造の小学校はよかった・・・なんていうのはセンチメンタルなだけであり、夏は暑いし冬は寒いし。でも、無味乾燥としたコンクリートの校舎くらいなら簡単に(?)壊してあの頃の木造校舎を再現することは出来ますが、ダムとなるとそう簡単にはいきませんからね。

何世代も引き継がれる資産として、そこにそれがあるべきなのか?さて、どうなんでしょう?

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