2010.07.25

CLASSICS

モーツァルト クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581(1789)

世に「地獄のナントカ」と評されるものがたくさんあります。一方で「天国のナントカ」というのは意外と少ない。時代が厳しくなればなるほど、「天国のような・・・」という表現は、ますます肩身が狭くなるのでしょうか?

しかし、そんな時代だからこそ、あえて「天国」を唱えてみたい。ということで、今夜はモーツァルトのクラリネット五重奏曲です。

「天国」というのはキリスト教における極楽浄土。偉そうに言う私も、実際に見たことはないのですが、イメージとしては白くもやのかかったような空間とやわらかい時間の流れ。そしてそこを満たすのにぴったりの楽器は、ピアノでもヴァイオリンでもなく、私は「クラリネット」だと思うのです。

そうあの、「パパからもらった、壊れて音の出ないクラリネット」

そして恐らくは、天国のある日に流れているであろう音楽が、モーツァルトのクラリネット五重奏曲だと思います。

稀代の美しきメロディ・メーカーであったモーツァルト。かの時代にはクラリネットはまだ出来たばかりの楽器でした。低音では太く厚く、高音になるほど繊細で明るい音色になるクラリネット。恐らくはいつも体中が「天国のような調べ」に満ちていた彼が、この楽器に夢中になったのは無理もないことでしょう。

友人のクラリネット奏者シュタードラーに依頼され作曲されたこの曲を聴けば、閉じたまぶたの裏に静かに流れ込んでくる霧のように、「天国」のありさまが浮かび上がってくるのは私だけではないはず。

この曲は通常のクラリネットの音域を超えているため、バセットもしくは広音域クラリネットで演奏されます。

ブラームスにも大きな影響を与えたというこの曲。地獄をかいくぐってきた一日の終わりや、心を癒す休日の午前中に、あなた自身の「天国」へのチケットを・・・。

ちなみに一般的な「三大クラリネット五重奏曲」は、モーツァルト、ウェーバー、そしてブラームスを指します。

手元のCDは、デイヴィッド・シフリンの広音域クラリネット、エマーソン弦楽四重奏団です。

モーツァルト:クラリネット協奏曲

おすすめ平均:4.5
5これぞモーツァルト
4安心して聴ける

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