2011.01.07

Movies

The Hours 邦題:めぐりあう時間たち

ヴァージニア・ウルフの小説「ダロウェイ夫人」で繋がってゆく、異なる時代を生きた3人の女性の「生」をみつめたドラマ。マイケル・カニンガ原作の同名小説の映画化。アカデミー賞主演女優賞受賞作品。

「私が花を買ってくるわ」とダロウェイ夫人は言った。

この書き出しから始まる小説「ダロウェイ夫人」を執筆した女性作家のヴァージニア・ウルフ(ニコール・キッドマン)は、1941年に夫レナード(スティーヴン・ディレイン)へ感謝の書き置きをして川へ入水自殺します。

the_hours.jpg1923年、イギリス。病気療養のためロンドンを離れ、郊外のリッチモンドに夫と共に暮らす彼女は、心の病と闘いながら「ダロウェイ夫人」を執筆中でした。

時と場所が変わり、1951年のロスアンジェルス。妊娠中のローラ・ブラウン(ジュリアン・ムーア)は、夫ダン(ジョン・C・ライリー)と息子のリッチー(ジャック・ロヴェロ)との3人暮らし。優しい夫との暮らしは何不自由ないものでしたが、繊細な神経をもつローラは夫が望む理想の妻でいることに疲れていました。

今度は2001年のニューヨーク。編集者のクラリッサ・ヴォーン(メリル・ストリープ)は、エイズに冒されたかつての恋人で作家のリチャード(エド・ハリス)の受賞パーティーの準備におおわらわ。しかし彼女は、リチャードが名づけたニックネームである「ミセス・ダロウェイ」がトラウマとなり、自らの感情を押し殺してリチャードの身の回りの世話をしていたのでした。

再び時代は1950年代へ。ダンの誕生日の朝、いつになく気分のいいローラは、息子と共にケーキ作りをはじめますが・・・

3つの時代を生きる、それぞれ心を病む3人の女性の物語。といっても、正論を語るヒューマンドラマではありません。ヴァージニアは訪ねてきた姉と、そしてローラは友人とフレンチキスではないけれど、姉妹とは思えないキスを交わす。

精子バンクで受精したクラリッサは同性の友人と同棲中だし、かつての恋人でエイズを患うリチャードは、かつて彼女を捨てて同性の恋人を選びます。

まあ、現代であれば同性愛者にも市民権が与えられはしていますが、それにしてもマイノリティに違いはない。昔から英雄の男色というのはあったそうですが、人間としてのおごりと言いますか、素の人間らしさというか動物らしさのないそういう嗜好は個人的にはNGです。

ただ、そういう部分を持ちえる人間と言う複雑な神経と思考を持つ動物の、我々のような単純な「男ども」とは異なる「母」であり「女」であり、そして「人間」でもある女性という性を通して、生きるとは?幸せとは?人生とは?を、この物語は問いかけてきます。

結局、ヴァージニア・ウルフに「人の死は、その他の人の生を際立たせるもの」と言わしめ、人が生きる「数時間」の中にその人の生涯ほどの輝きを見出そうとします。

監督のスティーヴン・ダルドリー、女性ではありませんが、微妙な女心の一面をうまく表現している。と思いきや彼は「バイ」らしい・・・。

自ら死を選ぶ人間を描きつつ、「生きる」ことの賛歌を鼻声で聞かせる。デリケートでささやかな、社会派的作品かもしれません。ジュリアン・ムーアの老化メイクの長時間アップは、ちょっとしらけますが・・・

映画のプロモーションは明らかに女性向けでしたが、男性にこそ見てほしい作品。

出演:ニコール・キッドマン,ジュリアン・ムーア,メリル・ストリープ,エド・ハリス,トニ・コレット,クレア・デインズ,ジェフ・ダニエルズ

監督     スティーヴン・ダルドリー 2002年

BOSS的には・・・★★★☆☆

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