2011.07.09

CLASSICS

エドヴァルド・グリーグ ペール・ギュント 作品23 (1875年)

ペール・ギュントの「朝」、あまりにも有名ですね。最近商店街が被災地に向けたイベントのコア曲として採用したと聞きました。

そもそもこの曲は、サブタイトルどおりヘンリク・イプセンのレーゼドラマ(読むための戯曲)として書かれた文学作品を舞台化するに当たり、イプセンによって作曲を依頼された付随音楽です。

物語は、自由奔放な乱暴な若者ペール・ギュントが村にいられなくなり、放浪の旅の末に老いて帰郷し、かつて恋に落ちながら捨てたソルヴェイの子守唄を聞きながら息を引き取るというもの。

途中、山師のようなことをして金をもうけては一文無しになったり、最後は善人でも大悪党でもない「中庸」、つまり凡庸に生きた人間にはボタンに溶かされるといった、当時としてはかなり風刺的な作品なのですが、グリーグの手による音楽は少しロマンティックに振りすぎているようで、その結果、「朝」だけが一人歩きするといった事が起こってしまう。

まあ、クラシックに詳しくない方に、「ペール・ギュントって何なのだろう}という気づきを与えるということでは、それはそれでいいのかもしれませんし、「癒しのクラシック」などという馬鹿げた選曲CD集の常連ですからそれはそれでよしとしても、個人的には震災復興と「ペール・ギュントの朝」とはちょっと違うような気がします。

全5幕のこの戯曲、第1幕前奏曲もどこかで聞き覚えのあるメロディです。しかし途中、「こいつを殺せ!」とか「かかってこい!」とかいったセリフが続きます。

そして知られた「朝」、正しくは第4幕の第13曲前奏曲「朝の気分」。しかし続く第14曲は泥棒と盗品飼いの会話だったりして、皆さんのほんわか気分はぶち壊しになります。(笑)

富と快楽と冒険を追い求めた一人の男が、死の間際になって一人の女性の献身的な愛によって人生で最も大切なものに気づくというようなことでしょうか?

そういう主題だとすれば、前段で批判的に書きましたが、当たらずも遠からずかもしれません。

いずれにしても、「朝」を聴かれて興味をもたれた方は、是非「ペール・ギュント」を聞いてみてください。

お勧めは、ブロムシュテット指揮サンフランシスコ管弦楽団、1988年録音です。

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