BOSS's Column

ちょっとしたことから、一気に運命の坂を転げ落ちる兄弟を描いたヒューマン・ドラマ。768本の映画投稿です。

ロンドンの南部。父親が経営するレストランで働く長男イアン（ユアン・マクレガー）は、カリフォルニアのホテル事業に投資し、実業家としての成功を夢見ていました。

一方、自動車修理工場で工員として働く弟のテリー（コリン・ファレル）は、酒とギャンブルがささやかな趣味でした。兄とは違って野望は抱いてはいませんが、恋人ケイト（サリー・ホーキンス）と一緒に住むマイホームを持つことが唯一の夢でした。

抱く夢も性格も対照的でしたが、仲のよい二人は、格安で売りに出されていた小型ヨットをローンで共同購入、テリーがドッグレースで大穴を当てた犬の名にちなんで「カサンドラズ・ドリーム号」と名付けます。

ある日、イアンは車の故障で立ち往生していた若い女優の卵、アンジェラ（ヘイリー・アトウェル）の手助けをし、お礼にと彼女が出演している芝居に招待されます。

テリーの修理工場から無断で借り出した高級車でリッチな雰囲気を演出したイアンは、アンジェラのハートを射止め、二人は結ばれます。

お互いにそれぞれの夢に向かって歩んでいた矢先、テリーはマイホームの資金にと大金が動くカードゲームに手を出し、闇金相手に一晩で9万ポンド（1500万円）もの借金を作ってしまいます。

ユーモアとペーソス溢れる恋愛映画の名手、ウディ・アレンによる純粋なヒューマン・ドラマです。

ごく普通の、どこにでもいるような仲のよい兄弟が、ふとしたことで道を踏み外し、一気に坂を転げ落ちることになります。

このあたりの二人の演技はなかなかのもので、さすがは人のココロをえぐり出すのがうまい監督ならでは。コリン・ファレルなど、「アレクサンダー」や「マイアミ・バイス」のあの自信過剰な演技の後とは思えないような演技です。

しかし、監督ならではの上品さが災いし、人間の本来持つドロドロ感を表現するには至っていません。

そういう意味では、イギリス映画というよりはやはりアレン映画でしょう。

原題の「カサンドラ」とは、ギリシャ神話に登場する悲劇の預言者。映画「カサンドラ・クロス」なども、同じ意味で使われていました。

一気に人生を変えることができるようなチャンスは、そうそうありません。そしてその時が来たら、人生をかける勝負に出る。

しかし、そうして成功の階段を一気に駆け上った人間はほんの一握りであり、一度きりの人生を台無しにしてしまう人間は数知れず・・・

という問題定義の作品でした。

出演：ユアン・マクレガー,コリン・ファレル,ヘイレイ・アトウェル,サリー・ホーキンス,トム・ウィルキンソン,フィル・デイヴィス,ジョン・ベンフィールド,クレア・ヒギンズ

監督・脚本：ウディ・アレン　2007年

BOSS的には・・・★★☆☆☆

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