2004.09.05

CLASSICS

ヨハネス・ブラームス 交響曲第一番 ハ短調 作品68(1876年)

「ベートーベンって知ってますか?」

「知ってるよ、運命!ジャジャジャジャーン!」

「じゃあベートーベンの第9は?」

「あの年末にこぞってやるやつ、合唱隊がいるやつだよね?」

「そうそう。で、交響曲第10番って聞いたことあります?」

「ええ?彼は第9までしか作らなくて、あの合唱で完全燃焼して、交響曲というカテゴリーを極めたんじゃないの?」

「そのとおりです。ではブラームスはお好き?」

「おいおい、今度はサガンかよ?」

「ブラームスの1番は、ベートーベンの10番って呼ばれることがあるんですよ?」

「???」

19世紀の作曲家の中でも、ベートーベンの生粋の後継者だったという意味と、彼自身尊敬してやまず、ベートーベンを超えることを恐れ、できれば隣に並びたいと作ったのがこの曲です。リストやワーグナーを中心とする「新ドイツ派」から古典的と揶揄されながらも、彼のベートーベンに対する思いは貫かれ、作曲には推敲に推敲を重ね、この曲も完成がなんと43歳のとき。軽々しく出したくなかったのか、怖がりだったのか。優柔不断だと言う話もありますが、とにかくすばらしい曲です。
ティンパニの打音から始まる威風堂々とした第一楽章では、ベートーベンの直系であることを宣言はしていますが、全体的には北ドイツの深い緑と澄んだ空気、そんな素晴らしい自然の中で人としてどうあるべきかを切々と語るような、ゆったりとたわわに情緒あふれる曲です。ハ長調という例の第9のと同じ調を採り、また第4楽章終楽章では、「喜びの歌」に似た主題を展開したり、つまり彼なりの第9を完成させているのです。
で、予断ではありますが、私の愛してやまないマーラーの野望(?)の前に立ちふさがっていたのが、誰あろうこのブラームスだったのです。彼の恩師シューマンとの交流やその妻クララへの友情物語はまた後の機会に。生涯でたった4曲の交響曲しか書かなかったブラームスは、この第一の後はどんどん世界救済から離れ、自己の内面に入ってゆきます。

[CD聞いてみてちょ!]
■ザンデルリンク指揮 ドレスデン・シュターツカペレ

どうしても力の入ってしまうこの曲に対し、ひとかけらの力みもなく、統制された美学が貫かれた素晴らしい演奏になっています。細かなニュアンスを重ね、デリケートに表現された中間楽章も叙情とロマンたっぷりで、終楽章へとなだらかに流れてゆくさまは、大自然の美そのもののようです。保守的であることの枠組みの中で、最大限表現されたロマンの物語になっています。
1971年3月他録音

ブラームス:交響曲第2番

コロムビアミュージックエンタテインメント
Amazon.co.jp ランキング: 2110位

おすすめ平均:5
5地道な名演奏
5楷書体の名演


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■バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

「マーラーのバーンスタイン」がウィーンフィルを振った1枚。このアルバムは、この曲のロマンチシズムをウィンフィルのシルクの音色で表現しています。堂々と朗々と謡われるメロディも細かなニュアンスも、ウィーンフィルのもつ表現力をあますことなく表出させています。特に中間楽章の叙情的な表現は美しいという一言に尽きます。終楽章フィナーレは、他の2枚ほどのゲリラ的な盛り上がりには欠けますが、あくまでも堂々としたウィーンフィルならではのフィナーレを堪能できます。
1981年10月録音

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おすすめ平均:5
5濃くまろブラームス
5今聴くと、快活に感じるのは、何故か?
5マーラーに向かうときと同様の陶酔のクレッシェンドですわな
5気持ちいい

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■ミュンシュ指揮 パリ管弦楽団

ベートーベンといえはフルトベングラー。ではブラームスでは?とお思いなら、このアルバムをお勧めします。「幻想交響曲」では、あれほど鮮やかなフランス料理を堪能させてくれたこのユニットが、今度はフルトベングラーの代弁をしているような熱いライブを伝えてくれます。相変わらずパリ管の名人芸を引き出しつつ、ピアニシモからフォルテシモまで絶妙のコントロールの連続です。ブラームスもこの演奏を聞いたら驚いたのではないでしょうか?「私の作ったのはこんな曲だったんだ!」と。1枚目とは違い、ロマンの流れ中に浮かぶ保守の味もなかなかのものです。
1968年1月録音

ブラームス:交響曲第1番

TOSHIBA-EMI LIMITED(TO)(M)
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おすすめ平均:3.5
1これが名盤?
5豊かな低音の味はほかでは味わえない
3改めて聴き直すと

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