2004.09.10
Amazing 745Li 素人ロードインプレッション
大の男が「Amazing!」と驚嘆しながら車から降りるTVコマーシャル。ありがちな走行性能をうたったメッセージ(新型クラウンもそうだなぁ)。そんなBMWのフラッグシップサルーン745Liを4日間ほど所有(?)する機会がありましたので、その時の素人インプレッションなどを書いてみます。
まずは、ディーラーにお邪魔して745Liに乗り込み、営業の方から取説をうける。いや、これが必要なんです、この車に関しては。まずエンジンをかけるのはレーシングカーよろしくボタンプッシュ。エンジンがかかったところでギアをDモードに・・・ない、シフトレバーがないのです。教えてもらったのはハンドルのワイパースイッチの上にニョキっと生えてる小さなレバー。「手前に引いて下げてください!」「は、はいっ。」「左側のボタンを押せば、パーキングブレーキ解除になります!」「は、はいっ。」かくして空飛ぶ円盤に乗ったような気分の私を乗せて、車はするするとディーラーのガレージを出て行ったのでした。
ここまでのAmazing・・・
Amazing 1:スイッチのようなキー(?)
Amazing 2:おもちゃのようなシフトレバー
走り始めて最初に気がつくのが、2000回転あたりのトルクの太さです。街中でも多用するこの回転域のパワーは絶大で、ちょいと踏みすぎようものなら、あっという間に前の車に急接近。(445ps 61.2kgmの760ってどんなんだろうなぁ)これは中間加速時にも顕著で、フルスロットルでキックダウンを伴うような追越の時には、かなり車間距離をとっていないとハンドルさばきが追いつかないほど強烈です。変速機自体は6速となり、よく仕組まれたプログラミングで、通常の使用ではシフトショックなしにリニアに加速してゆきます。遮音も非常によく、私が現在乗っている同じV8とは思えないほど静か。そうそう、オーディオも純正ながら素晴らしい音がしていました。これなら、私みたいな馬鹿な真似をしなくてもすみます。10個のSPで構成されたシステムはバランスが非常によく、特にクラシック系の音が素晴らしく、マーラーの第5交響曲を繰り返し堪能しながら、極上のドライブを楽しむことができました。もちろん静かなだけではないのがさすがはBMWで、4000回転あたりからはしっかりと、カムに載った32バルブと8つのシリンダーの力強いサウンドを聞くことができます。
ここまでのAmazing・・・
Amazing 3:新型4.4L V8エンジン(333ps 45.9kgm 1-100km/h:6.3sec)
Amazing 4:電子油圧制御式6速AT
さて、街中を過ぎ、車は一路ワインディングへ。「えっ?7のロングでワインディング?」そうなんです。なぜかといえば、このシリーズに搭載されている電子制御ダンパーとアクティブ・シャシー・コントロールを味わうためなのです。街中ではしっかりとしながらも適度にショックを吸収してくれていた足回りなのですが、ここでまたAmazingなのです。なんとロールしない。タイトなコーナーでも、ちょっと攻めたくらいでは全く水平飛行なのです。まるで小型のミッドシップを操っているような錯覚に陥るのです。さすがにハードに攻めると、フロントの245-45-15では役不足で、タイヤが悲鳴を上げているのが手に取るようにわかり(この辺もハンドリングのダイレクト感優!)数百キロのV8の存在を思い出させ、いつ大アンダーになるのかと不安にはなりますが、普通のドライブではそんな思いをすることはまずないでしょう。ただ、どこまでいってもニュートラルにしつけられたハンドリングは、サーキット走行なのでは相当手を焼くはずで、わざと仕掛けてリアを滑らさないと自然にオーバステアには持ち込めない感じでした。リアの275-40-19がややオーバースペックなのかもしれません。リアも245あたりにすれば、もう少し面白いかもしれません。ただ雨天のスタート時のホイールスピンを受け入れること、全長5.2m、ホイールベース3.2m、車両価格1200万円をテールスライドに持ち込む勇気があればのことです。ところで、2.5tonもあろうかというこの巨体を踏み具合に応じて答える制動力も素晴らしい出来でした。もちろん、先にお話したトルクフルでストレスのないパワフルなエンジンも、この峠の一時をしっかり演出してくれています。そういえば、ハンドリング自体も旧モデルからは随分進化しているようで、まるでボール・ナットからラック&ピニオンになったようなダイレクト感とクイック感にも驚かされました。
ここまでのAmazing・・・
Amazing 5:ハンドリング(ダイナミック・ドライブ、EDC-C他)
Amazing 6:ブレーキ性能(制動力、フィーリング)
**外観の印象**
最近のBMWのデザインコンセプトはより戦闘的になってきていて、特に弟分の5シリーズは猛禽類とでもいえそうなデザインになっています。おっとり型で人のよさそうな(まるで私のような)おじさんにはちょっと似合わないのかもしれません。最近のメルセデスが威風堂道からスポーティエレガンスに振ってきている中での、あえての選択だったのかもしれませんが・・・個人的にはメルセデスLのデザインのほうが好きです。細かい部分のフィニッシュは確実に130%アップしています。
**内装の印象**
皮製のシートの出来は、ホールド性などもふくめ格段の進歩です。ただデザイン自体は地球の高級車をまねて作った高級空飛ぶ円盤の内装のように思うのは私だけでしょうか?話題になったiDriveなるつまみひとつのコントローラーはよく出来てはいますが、機能が多すぎて複雑怪奇。メカ音痴にはまず使いこなせない代物になっています。これは機能操作全般に言えることですが・・・(私は最後までオートクルーズが理解できなかった・・・)
**気になること**
さて、ふつーのおじさんにははっきり言ってこの足回りやエンジンは不要です。(えらそうに言ってすいません)どうしてもという方は、3.5Lモデルで十分です。そして、ふつーに運転するには、至極安全で快適なサルーンです。これは問題なし。ただ私なら、仮にZ4との2車択一なら、迷わずZ4です。
あと、乗ってすぐ感じたのがウィンドウガラスの歪です。これはフロント、サイドともで、フロントなどはちょうどその部分が運転中の主な視線と交差すると、車酔いに似た軽いめまいを感じました。外からよくよく見れば、単純な面構成のように思えて、実は結構複雑な3次元処理をしています。これはフロントのみならず、サイドのガラスも同様。個体差かもしれませんが、非常に気になり、営業の方にこんな話はないですかとお聞きしましたが、そんなことを言ったのは私が始めてとのこと。睡眠不足だったのかなぁ???
というわけで、至福の4日間を過ごして、ディーラーに返しに行き、愛車に乗り換え着路につきました。10年物の愛車、さっきまでの車と比べると確かにすべてが古臭く、やれかけていて、同じバージョンの車とは思えない。でも、お気に入りのヒップコンシャスを目を細めながら眺め「これもありだよね!?」と、にやにやしながら帰宅したのでありました。
**結論**
宝くじで1億円当たったら、考えます。