2004.10.06
BRILLIANT CORNERS by Thelonious Monk (1956)
ここ数枚のピアニストシリーズは、いわゆる「非パウエル派」が多かったのですが、そのなかでも、数多くのミュージシャンに影響を与え、またマイルスの演奏などでも有名な「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」などの作者でもあるセロニアス・モンクをご紹介しましょう。ああ、最近どこかの美術館で盗まれたと言う「ムンク」とは関係ありませんよ、念のため・・・
ピアニストとして60年近くの生涯で、80枚ほどの録音を残している彼ですが、その独特の音楽という名の音楽は、たとえば「レフトアローン」のように情緒に訴えるものでもなく、「ゴールデン・イヤリング」のようになじみやすいものでもなく、どちらかと言えばとっつきにくいものが多いのは事実です。たとえば、ジャズをお酒のつまみにしたり、何か悪巧みを考えているやからにとっては、むしろ60年代のフリーモードに近い、つまり騒音に近いものになってしまう、彼独特の時間感覚と素っ気のないフレーズ。じゃあ、「俺は硬派の本物のジャズフリークだから」と無理して自分をそこに落とし込むような危険な真似をしなくても、ジャズが音楽という表現手段であることを再び思い出しさえすれば、すーっと馴染むことができます。(どうしても馴染めない方は、それはそれでいいと思うし・・・)
このアルバムでは、トランペットにクラーク・テリー、アルトサックスにアーリー・ヘンリー、テナーサックスはソニー・ロリンズという3管編成で、ポール・チェンバースのベースにマックス・ローチのドラムという、当時としてはカリカリのハード・バッパーを招聘しつつ、パパーンという開放熱烈ブローイング・セッションにはならず、いわゆる「モンクス・ミュージック」(コルトレーンを従えた同名のアルバムもなかなかの出来です)を展開しています。そっけないと思っていた時間軸の中に、モンクの埋め込んだ静かに熱いパッション。はまってしまうとなかなか、いや決して抜け出すことの出来ない巧妙に仕掛けられたジャスという罠があなたを待ち構えています。癒しの必要のない方へ。