2004.10.20
SUBCONSCIOUS-LEE by Lee Konitz (1949-50)
「秋の大サックス祭り」はまだまだ続きますが、この辺でちょっとポピュラリティをはずして、コアでマニアックなシリーズへ。
太平洋戦争が連合軍の勝利に終わった頃、ニューヨークでレコード店を営んでいた一人のジャズファンがいましたとさ。で、彼の名前はボブ・ワインストック。そうです、かれこそがプレステージ・レーベルの創始者です。そして、時は49年、初めてプレステージとして録音されたのが、当時ポスト・ビ・バップとして人気の出始めていた「クール・ジャズ」。選ばれたメンバーは、クール・ジャズの代名詞でもある盲目の白人ピアニストのレニー・トリスターノとその門下生の、リー・コニッツ、ワーン・マーシュ達でした。プレステージ第一弾であり、またクール・ジャズの代表作であるこのアルバムはこうして世に送り出されたのです。
ポール・デスモンド、アート・ペッパーと並ぶ3大白人テナーマンとして、クールでシャープ、知的でアブストラクトな演奏でその地位を確立したリー・コニッツ。チャーリー・パーカーから影響を受けながらも、極力それを排除し、師と仰いだトリスターノの目指す「冷たい炎」が、3人の重ね合わせの上に見事に結晶し、またギターのビリー・バウアーがそれに花を添えます。コニッツのアルトとマーシュのテナーは、あたかも一卵性双生児のように時に寄り添い、時に反発しあい、音色自体はクールでありながら、まるでプッチーニのオペラ「トゥーランドット姫」の心のように、冷たく熱く燃えたぎります。しかも時にパーカーを髣髴させるスピード感溢れるフレーズと、不思議な揺らぎの感覚は、冷たさのなかに見出す心地よさ。「SUB・・の時の自分は、本当の自分だったかどうかわからないのです。」と後に語った彼の、あるいはJAZZが進化してゆく中の、クールなまま熱くたぎるひとつの時代の記録です。もちろん、録音はモノラルです。ちょっと懐かしい雰囲気、でも本格的なJAZZを聞いてみたい方におすすめ。