2004.11.09

ROCK

THE ALLMAN BROTHERS BAND AT FILLMORE EAST (1971)

今日は20世紀ロック界最高のライブ・アルバムと言われる、オールマン・ブラザーズ・バンドの「フィルモア・イースト」をご紹介します。

右利きの人がギターを弾くにはネックに沿わせた左手の指で弦を押さえ、右手でピッキングします。この右手はプラスチックやべっ甲、金属などっでできたいわゆるピックで弦を爪弾くか、指自体(爪も使いますが)で爪弾きます。で、問題は左手です。普通は指で出したい音を選んで弦を抑えるのですが、ブルース・マンや一部のCWでは、ガラスや金属で出来た筒を指に差し、このボトルネックを弦の上の抑えるべき場所にスライドさせて弾きます。いわゆるボトルネック奏法と呼ばれるものです。もともとはテキーラとかウィスキーの瓶の口を落としてそれを使ったのが始まりと言われています。つまりブルースマンご用達のアイテムなのです。で、このボトルネック奏法の神様が、このバンドのギタリスト、デュアン・オールマンなのです。

どこがどう神様なのか・・・まあとにかく聞いてみてください。特にブルースが好きな方にはお勧め。まずはジョージア州はB.W.マクテル作品、1曲目の「ステイツボロ・ブルース」のっけから、デュアンのスライドギターは全開です。いや、本当にすごいんです。スライドさせて弾いてるとは思えない。電気ギターの経験があって、スライド奏法をかじったことのある方は、きっとこの神業に、あきれるか呆然とするに違いありません。そしてデュアンの弟、グレッグの黒っぽいオルガンとしゃがれたブルース・ボーカルもしびれます。グレッグ・オールマンといえば、同じく歌手で映画「月の輝く夜に」などに主演もしたシェールと結婚していた時期もありましたねぇ(今は別れているはずですが・・・)3曲目のT.B.ウォーカーの「ストーミー・マンディ」、4曲目の「ユー・ドント・ラヴ・ミー」と、デルタ・ブルースをサザン・ロックにのせて、オールマン節全開で駆け抜けます。

このバンドはツインドラムスでも有名なのですが、初期のドゥーヴィー・ブラザーズのような完全なユニゾン・ドラムではなく、ロック太鼓のJ.J.ヨハンソンがリード・リズムを刻み、JAZZ太鼓のB.トラックスがサポートします。この二人の掛け合いも素晴らしく、このバンドの彩をより深いものにしています。ちなみにデュアンのギターをブルースハープのようだといった友人がいましたが、ブルースハープも使っているのでお間違えのなきよう・・・

で、私が個人的に気に入っているのは、2枚目の1曲目(1枚CD版だと5曲目)彼ら全員の(?)オリジナルである「アトランタの暑い日」のまるでハードバップのような、ジェットコースターでマッ逆さまに落ちるようなメロディと、南部のおっちゃんくさいバンドがやってるとは思えないメロディアスでナーバスなD・ベッツ作「エリザベスリードの追憶」。この曲は昔、よくこぴって練習したものです。「エリザベスリードの追憶」は彼らのスタジオ録音のアルバムにも収められていましたが、これはただのサザンロック。つまり彼らが如何にライブ・バンドであったか、ライブと言う一発テイクの世界で、聴衆と一体になることによって真価の200%を引き出すバンドだったかと言うことがわかります。「ロックはライブ」の所以です。「ロックバンド」を自称しながら、ライブでよれよれのバンドの以下に多いことか・・・とにかく1流半といわれるD・ベッツもデュアンとの掛け合いではなかなか素晴らしいフレージングを聞かせてくれます。サザンロックと言えば、デルタブルースのけだるさを持った、いわゆる「レイドバック」ロックなどと言われますが、このバンド、このアルバムに関して言えば、最初から最後まで今にも切れてしまいそうにテンションは張り詰めたままです。

このコンサートの前に、デュアンはクラプトンの依頼でデレク&ドミノス(というよりもクラプトンとして)の有名な「レイラ」のセッションに参加。彼からバンドに参加するよう招請されたそうです。もしそんなことになってたら、この歴史的なアルバムもなかったかも・・・そして、なんとこのコンサートの半年後、彼はバイク事故でこの世を去ってしまいます。享年24歳。「スカイドッグ」と呼ばれたギターの神様は、若くして神様と呼ばれてしまったが故に、あっという間に短い人生を駆け抜けてしまったのでしょうか?

かつてこのコンサートの模様は、このアルバムと次の「イート・ア・ピーチ」のそれぞれ2枚組みのLPに別れていたのですが、最近になってマスターテープが見つかったと言うことで、未発表曲も含めそれぞれを1組のアルバムにした「The Fillmore Concerts」というアルバムも出ています。一気にオールマンのすべてに触れられたい方はこちらがお勧め。「マウンテン・ジャム」では20分以上の火の出るドラム合戦を聞くことが出来ます。


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