2006.01.19

COLUMN

「仕事の意味」

JAZZコーナー「臨時休業」

木曜日になりました。午前中1件、お客様を訪問。大きなご期待に、しっかりとお応えできるよう、目いっぱいの知恵をお絞りします。午後から制作チーフとプロジェクト会議に出席のため別のお客さまを訪問。貴重なお時間をありがとうございました。こちらも明日からフル稼働に入ります。その後、もう一件のお客様を訪問。こちらは機器導入の打ち合わせ。4拠点10数台の機器増設にサーバ調整、配線工事にVPNまで、フルメニューの予定です。帰社して営業会議。戦う相手は自らですから、戦略戦術も難しい。その後、社内勉強会。今日はネットワーク回りから暗号化まで。皆さん、お疲れ様でした。

今日久しぶりの再会がありました。今から18年前に大変お世話になった人です。当時私は某ゼネコンで現場監督をしていました。1988年。瀬戸大橋が開通し、世の中はバブルに沸いていた頃です。私は、辺境の地でとあるレストランの突貫工事の責任者をしていました。同じ頃、支店内の市内にある大規模な公共建築物の工事が大幅に遅れ、またバブルと瀬戸大橋開通が重なって大変な建設ラッシュ。職人さんは全く足りない状況でした。確か北海道や九州からも、たくさんの職人さんが泊り込みで来県していました。

私の現場も突貫工事でありながら、全く人が足りない状況。特に内装工という、壁や天井のボードを張る職人さんが、本来なら10人くらいいても不思議は無いのに、3人しかいない。業者さんに頼んでも、会社の購買部にお願いしても、全く増える気配はありません。しかもその3人の職人さんは、夜の10時ごろになるとすごすごと帰ってゆく。

「朝まではまだまだ時間があるよ!」
「いやー、これから他の現場にいくのよ!」
「・・・・」

仕方が無い。少しでも工事を進めなければと、部下2人を連れて、監督である私たちが自ら夜中になると朝まで壁や天井を貼っていました。残り期限ももうわずか。にもかかわらず、1階の天井およそ300坪ほどは、すべてむき出しの状態でした。

ある日晴れた日、1本の電話が現場事務所にかかってきました。

「○○やけど・・・」
「おー久しぶりー、2年ぶりかなぁ? そっちも大変みたいだなー」
(彼は内装やさんで、先にお話した公共工事現場のメインの職人さんの頭(かしら))
「いや、そんなことより宮内さん、ボード張ってるって聞いたんやけど・・・」
「うん、背に腹はかえられないからねぇ。格好言ってる場合じゃないし・・・」
「わし、明日行ってあげるわ!」
「お前、今そっちの現場ほっぽり出したら、指名手配かかるぞ!」
「わしだって、風邪くらいひくわな。じゃあ明日」

まあ、そうは言ってくれたけど、あいつ一人で様子見に来るくらいだろうなぁ・・・

翌日彼は、手下を10人ほど引き連れて、うちの現場に姿を現しました。勢ぞろいしたその精鋭たちを見たときは、本当に涙が出そうでした。そして、1日でその駐車場の天井を貼り終え、颯爽と帰っていったのです。もちろん、朝から向こうの現場は、バケツをひっくり返したような大騒ぎだったそうです。

「ありがとう。」

帰り際に、私が彼にかけた言葉はそれだけでした。でも、このたった5文字に、当時の私はどれほどの感激と感謝の気持ちを込めたことか。たかが仕事です。ただで何かをしたというようなことでもありません。でも、わかってもらえますか? 彼の男気。決して強面のがたいのごっつい人ではありません。男前の優しくて気遣いのあるスマートな人間です。これは私の人生の中で、私にとって「感謝」を定義する大きな出来事であり、また私にとっての究極の「仕事」の定義にもなりました。私も自分がしたほどの感謝を、お客様からされること。いつの間にか、それが私の「仕事の目的」になっていったのです。

もちろん、毎日の小さな仕事の一つ一つに、このような感謝感激が乗っかっていれば、暑苦しくってしょうがない、いやそんなことも当たり前になってしまうかもしれません。しかし、仕事というのはやはり、物やサービスと対価の交換だけでなく、人と人が信頼し依頼し、期待に答え感謝される。本来はそういうものであるという定義が、その時から私の中にはしっかりと刻まれているのです。

あれから20年近く。彼は全く変わっていませんでした。あの頃と同じ好青年(好中年?)でした。聞くところによると、今でもとてもいい仕事をすることで、あちこちですごく感謝されているらしい。うちのミッション「顧客のことを考えよ!」は、実はここから始まったのでした。皆さん、「仕事」を大切にしていますか?

BGMは今日から「J」。で、コルトレーンなのですが、以前マイルス者に成果てる前は、「コルトレーン命」でしたので、ちょっと覚悟を決めるために、勝手ながらJAZZコーナーは今日はお休みさせていただきます。

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