2006.02.26
ジャコモ・プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」
旬な話題、「トゥーランドットについて、詳しく教えて! 」というたくさんのリクエストにお応えして、「ネットで調べてください! 」ではなく、いつものごとく独断と偏見のオペラ三昧をば。
「トゥーランドット」はプッチーニの遺作です。彼はこのオペラの途中でこの世を去り、残りは友人のアルファーノの手によって仕上げられました。彼のオペラは、ボエームしかり蝶々夫人しかり、最後に誰かが死んでしまうのですが、このオペラでも途中のリューという女奴隷の死のシーンで、彼の筆は止まっていました。物語のあらすじは・・・
時は昔、中国は北京の王室をめぐる物語です。トゥーランドットというのはその王様の娘の名前。それはそれは美貌の彼女の、花婿つまりは王子になるためには、いろいろと条件があります。
1.王子であること(大路ではありません)
2.彼女の出す3つの謎かけに答えること
もし3つの答えを全て解くことが出来なければ、即打ち首になってしまうという決りです。これは実は、すぐれたものを婿に迎えるのが目的ではなく、その昔異国の王子に辱められた先祖のあだ討ちが目的だったのです。つまり、彼女なりの戦争なのです。そこに国を追われ流れ着いた一人のお馬鹿な王子がおりました。彼の名は「カラフ」、タタール王の王子ということになっています。いわゆるプッチーニのばか者です。彼に密かに恋心を抱く、貧しくも優しいリューという女奴隷の想いを振り切り、姫の謎かけに挑戦することになります。「謎は3つ、死は一つ」と歌われます。
さて、ここで彼女の出した謎かけは次の3つでした。
1.それは闇夜に幻影は虹となって飛ぶ。果てしなく暗い人類の上を、翼を広げて舞い上がる。全世界はそれを祈願し、全世界は嘆願する。しかし幻影は、再び心の中によみがえるために、暁とともに消え去る。それは、夜ごと生まれ、朝に死ぬもの。
2.火炎と同じように燃えるもの。しかしそれは火炎ではない。それは迷いである。熱は強烈で情熱的なもの。憔悴は転じて無気力となる。もし、お前が負ければ死して冷たくなる。征服を夢見るならば、心の炎を燃やせ。その声を震わせてお前は聞いている。あたかも夕日の生き生きとした光に、白熱を発する太陽が隠れるようなもの。
3.お前に与える冷たさは火となり、お前の火は私にはより以上の冷たさとなる。純白と暗黒。自由であることを欲すれば、お前がもっと忠実であり、その忠実さを受け入れさせるようにするのであれば、お前は王になるであろう。その冷たさとは・・・
さてさて、皆さんいかがでしょうか?これに正解すればちんけなハワイ旅行などではなく、一国の王子になれます。中国4千年の歴史です。もちろん一問でも間違えれば即座にチョンです。答えは、1週間ほど先に、このブログでお教えしましょう。
で、物語のほうは、なんとカラフは、この3つの謎を見事解きます。(台本どおりですからー)で、めでたしめでたし・・・とはならないのです。(時間の都合上・・・?)姫は負けは負けで認めますが、王子を決して愛しはしないと宣言しちゃいます。まがままなお嬢ちゃまです。で、今度はカラフが彼女に謎をかけます。「朝までに彼の名前を当てたら、暁までには見事死んで見せます。」などとヒロイックな失言をしてしまいます。ああ、どこまでいってもお馬鹿です。姫はしめしめ、なんとか探り出してやろうと、町中を探させます。「誰も寝てはならない、朝までに彼の名前を探し出さなくてはならぬのだから・・・」
そうです、これがあの有名なアリア「誰も寝てはならぬ」、開会式でパヴァロッティが歌い、荒川さんが滑ったあの曲です。
そしてついに姫は、かつてカラフに仕えていたリューの存在を知り、彼女を問い詰めます。リューは、月とすっぽんの身分の彼女に対し、けなげにも答えます。
「あなたの氷のような冷たさは見せかけです。
炎と燃えた人(カラフ)に打ち負かされた。
貴方も(私のように)きっとその方を愛するでしょう。
この夜明け前に、私は疲れ果てた目を閉じます。
なぜなら、あの方に勝って欲しい。
その勝利とは、私が再びあの方を見ることができないということです。
この夜明け前に、私は疲れ果てた目を閉じます。
再びあの方を、見ることがないように・・・」
ここでリューは、拷問にあえば自白してしまうと思い、カラフへの愛を遂げるため自らの命を絶ち、その名を永遠に封印します。・・・・うわー、もうここは、涙なくしては語れません。そして「あほな男とけなげな女性」という図式は、本来ここで終わるのですが・・・まだ、時間があります。(笑)
さてここで、リューの死を悲しんだカラフのとった行動とは・・・・
な、な、なんと大胆にもトゥーランドットに口付けを迫るのです。つまり、無理やりキスをする。セクハラです。時間の都合です。(嘘です。)ところがどうでしょう、魔法が解けたようにかたくなだった姫が、一人のうら若き女性に戻る。しかし、実は彼女はただ敗北に打ちひしがれていたのです。
「どうか貴方の秘密とともに、この地を去ってください」
安心したばか王子は
「私には謎などありませんよ! 私の名はカラフ、ティムールの息子です。」
敗北から一気に勝利の満面の笑顔になった彼女は、
(うひゃひゃっひゃ)
「私は貴方の名前を知っています、さあ(打ち首の)時が来ました。人民の前へ。」
「お、恐れません。」(し、失敗したー、なんちゅー軽率やったー)
そして彼女は、父である王と人民にこう宣言するのです。
「私は彼の名を知っています。彼の名は・・・・”愛”です。」
チャンチャン!
という感じです。まあ、全編を通してみれば、なかなかちょっと感動を覚えたりします。歌の楽しみとしては、先ほどの「誰も寝てはならぬ」以外にも、カラフに愛を告白するリューの「ご主人様聞いてくださいませ」、それに答えないカラフの「泣くのではない、リュー」、そして死を選んだリューの先ほどの「あなたの氷のような冷たさは」などが、聞き応えのあるアリアとなっています。まあ、ボエームや蝶々夫人などよりもからっとしてるかもしれないので、むしろオペラ初級の方にはお勧めかも。ただし、トゥーランドットのハイトーンの連続は、ソプラノ歌手を選びますのでご注意を。アリア集ではなく、できればハイライト盤ででもお聞きください。
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