2006.04.10
「しめた、インコース高め!」
STANDARDS LIVE by Keith Jarrett (1985)
今日は朝から雨でしたね。濡れてまいるにはちょっと激しい雨でした。四月も中盤に入ってきました。草花も木々も、競うように萌えほこっています。新しい季節、新しい出会い。雨に打たれたり、陽を浴びたりしながら、新しい命が育まれてゆくのですね。
世の中には、何の前触れもなく突然訪れる幸せや不幸があり、一方でありとあらゆる手と尽くしても手に入らなかったり、避ける事の出来ないこともあります。「運命論」とか云うものがあり、全ての出来事は初めから決まっていて、人はそれを変えることは出来ないし、うまく行っても行かなくても、それは決められたストーリーどおりだという考え方です。確かにそれは、「成功のうぬぼれ」から人を守り、「失敗の挫折」から私たちを救ってくれます。でも、私は運命論は信じません。己のうぬぼれを戒めるのも、挫折から這い上がるのも、自分自身なのだと思っています。
約半世紀にわたって、世界中のすぐれた頭脳により研究された「経営論」も、今のところ「計画と偶然」を許容しています。どちらも大切なことであり、受容したり享受すべきことでしょう。大切なことは、切り開く努力をもした迎えるべき環境の中で、いかに素晴らしく適応して生きてゆくか。人も企業も同じことでしょう。芸術家やミュージシャンでも同じだと思います。
野球を例にとって考えてみると、選手たちはシーズンオフだけでなく、シーズン中も日々鍛錬を続けます。苦手だった球種をはじき返す技術や、怪我をしない強靭な体つくりに専念します。しかし、いつのどの試合の何打席目の何球目にそれはやってくるかはわかりません。バッターボックスに立ったその時、それまで養ってきたバッターとしての資質を最大限発揮し、その時投手が投げてきた球(環境)に、全身全霊で対応する。そしてそこには、結果と共に「感動」が待っているのではないでしょうか? つまり大切なことは、日々の耐えざる努力と、ここぞという時の集中力なのでしょうね。しかしながら現実は、「光陰矢の如し」。あなたはあなたの「矢」を捕まえることが出来ますか?
今夜はキース・ジャレットの2枚目。「STANDARDS LIVE」なる1985年録音のスタンダード集です。メンバーはゲーリー・ピーコックに、かのジャック・デジョネット。デジョネットとは70年代初頭にマイルスバンドの同じ釜の飯を食った仲です。フリーの一歩手前でつんのめっていたトニー・ウィリアムスの後を受け、当時のファンクロックをサポートしたデジョネットも、80年代はしっかりスタンダード。(?)このアルバム、よくある「いいですか? 今日はちゃんとスタンダードって物を聞きましょうねぇ」的な手垢まみれのスタンダード集ではなく、異彩のキーボード、キースなればこその、「こういうのもあったのか」的演奏の連続です。マイルスバンドでは、あんな音をかましまくっていたことなど全く反省の色なしの、クラシックベースなタッチと素晴らしいインプロビゼーション。のっけから、「なんだ、この美しい調べは・・・」のピアノソロから始まる「星影のステラ」。「FALLING IN LOVE WITH LOVE」や「TOO YOUNG TO GO STEADY」など、皆さんにお馴染みの、でも聞いた事のない「スタンダード」集。あらためて、キースのピアノを召し上がれ!ただし、唸っててもいい人に・・・