2006.06.05
「今日が明日の糧となり・・・」
KIND OF BLUE (1959)
新しい一週間が始まりました(またかって感じですかねぇ・・・)。いつもと同じく、社内清掃に朝礼、運営会議。今日の御題は「仕事とは? あるいは、何のために仕事をするのか? 」。同友会の方々はピント来たはず。はい、このテーマを継続的にやることで、社員さんたちの成長を加速させようと言う、トホホ社長の悪巧みです。午前中は来客があって、あっというまに正午。午後からは部長と県外出張でした。帰りに2度ほど道を間違えて、Uターン。間違えないことが一番大事ですが、間違いに早く気づくことも大事、大事! と、呆け始めた自分をかばいながら帰社。戻って短い社内ブリーフィングを済ませ、夜は同友会の役員の方と食事をしながらのY談、いや綿密なる密談。お名前は・・・そうですねぇ、トリプル・エムとでもしておきましょうか? あー今日も、光陰のごとき一日でした。
うちは原則週休2日ですから、就業日は月曜から金曜までの5日間。3日目が終われば後半となります。そして、5日過ぎればあっという間に1週間が終わる。「今年度のわが社の・・・」などと偉そうに言っても、こうして「あっ」と50回ほどつぶやくと、1年なんて終わってしまいます。そしてそれを40回とか50回とか繰り返すと、人の人生まで終わってしまう。もちろん、私にはもうそんなに残ってもいないのですが・・・そう思うと、本当に人生なんて短いし、一年なんであっという間なのがよくわかる。だからこそ、一日一日、今この1時間、いや1分間をどう過ごすかの積み重ねなのですよね。
先週末あたりからマスコミでは、「村上ファンド」の話で持ちきりですが、私には彼のような優れた頭脳も、絶好の機会を捉える第6感もない。努力に努力を重ねてしかるべき「トホホ人種」。1分1秒といえばあまりにも刹那過ぎるし切ないので、せめて充実した「一日」を積み重ねていけるように、「がんばらねば、がんばらねば」と再認識した入梅前の暑い一日でした。
さてマイルスは22夜。今夜はいよいよ「Kind Of Blue」です。なにが「いよいよ」かって言うのは、JAZZファンじゃないと全くわからないでしょうが、このアルバム、マイルスのコアなファンだけでなく、広くJAZZファンの間でも「もしJAZZアルバムを1枚だけ無人島に持っていくなら・・・」投票で、絶対ぶっちぎり1位になる、そんなアルバムなのです。つまりは、「このアルバムを聴かずして、JAZZを語るな! 日光を見ずして、結構というな!」的アルバムなのです。
確かに素晴らしい、というよりすさまじい演奏です。うるさいのではなく、ピーンと張り詰められた緊張感、そして再現性の全くない、つまりは芸術性の高さで、他のあまたのJAZZアルバムを圧倒的に凌駕する全6曲。1曲目の「So What」。JAZZという言葉から真の意味で最も遠いところで鳴り響くイントロ。そして天から厳かに降り注ぐようなマイルスのトランペット。続くトレーンも、真空の中でマイルスと対峙するようなフレージング。そして持ち味の艶やかさで、逆に先発の二人を鮮やかに織り上げるアダレイ。これ以上、一音たりとも多くても少なくてもいけないという、まるで禁欲のカーニバルなのです。無声映画のもつ緊張感、わかります?
2曲目、「Freddie Freeloader」。ピアノがウィントン・ケリーに代わったのは、当時すでにエバンスが退団していて、この録音のための招聘されたから。このあとのマイルスバンドの鍵盤をになうケリーの初仕事は慣れない「モード」でしたが、なんとか無事こなします。他の4曲とはちょっと質感が異なるのですが、この曲のおかげで、なんとか聴くものを現実世界にとどめさせてくれます。
そしていよいよ3曲目の「Blue In Green」。このマイルスのミュートを聴け! (って、偉そうにすいません)私はトランペットは吹けないのですが、ミュートを付けるとマイルスっぽく吹くことはたやすいそうです。じゃあ、こんな風にやってみろ! というか、これぞマイルスなのです、帝王のミュートなのです。エバンスのピアノもそれはそれはそれはブルー。トレーンは後の「バラード」を彷彿させる、これまたソー・ブルー。タイトルを「Blue In Blue」にしてもいいのでは? いやはや、男泣きです、背中で泣いています。女子供にはわかるまい・・・ここでは、アダレイさえ出番がありません。
4曲目「All Blues」、偶数目には少し趣の違い曲を挟んで、5曲目の「Flamenco Sketches」も「Blue In Green」と双璧をなす孤高のマイルスの世界が広がります。
およそ芸術と言うものが、一切の再現性を拒絶した、その時のその芸術家にしかなしえなかったものであるとすれば、JAZZであるとかポピュラーであるとかではなく、それを「芸術」と呼ぶことに躊躇いは不要でしょう。1959年春に、マイルス、コルトレーン、アダレイ、エバンス、チェンバース、コブ(とケリー)が作った砂上の城。繰り返します。「これを聴かずしてJAZZを語るな!」いえ、語るだけならいいです、はい。でも、聴いたことないと言うあなた、聴いてくれたら、うれしいなったらうれしいな!