2006.06.13
「戦うチーム、勝てるチーム」
Someday My Prince Will Come (1961)
今日は一日、県外出張でした。夕べは日本中でため息が漏れたでしょうねぇ〜「悪夢の6分間」でした。ホイッスルが鳴ったらとめることの出来ない150分。刻々と刻まれる時間の中で、最大のパフォーマンスを出し切るのは大変ですよね。私たちの会社経営はと言うと、もっとゆっくりとした時間の流れではありますが、手の打ちようもなくあれよあれよという間に逆転負けなんてことはあり得ます。そのためには、やはり普段からの絶え間ない練習(スキルアップ)と準備(戦略戦術)が必要なのでしょうね。「備えあれば憂いなし」ですか・・・
さて、先週末はイギリスGP、その2週間前には伝統のモナコGPがありました。結果は、ルノーのアロンソの連勝。モナコではハプニングもありましたが、シルバーストンでは若きヒーロー、アロンソのポール・トゥ・フィニッシュという完璧なレースでした。今年のF1は3強、ルノーvsフェラーリvsマクラーレン・メルセデスですが、ルノーがアロンソのパフォーマンスと共に首一つ抜け出ている感じです。これまでにも何度かこのブログに書きましたが、現代の勝てるF1チームと言うのはただの技術屋集団ではだめです。さまざまな要素が高いレベルでバランスが取れていることが必要で、私たち零細企業でも同様のことが言えるのではないでしょうか?
まずはチーム代表(社長)、チーム全体の運営をつかさどると共に、スポンサー(株主)を確保すると言う重大な役目も担っています。ルノーならアラン・ダサス、マクラーレンのロン・デニスが有名どころ。実際の現場での指揮はマネージング・ディレクターやゼネラル・ディレクター(専務・常務)が担います。ルノーはフラビオ・ブリアトーレ、フェラーリはジャン・トッド、マクラーレンはジョナサン・ニール。彼らが実際のレース(現場)で、チーム戦略に沿って指揮をとり、状況判断で戦術を変更します。そしてF1を構成する要素のうち、ドライバーと双璧をなすエンジン・シャシーなどの技術部門を司るのがテクニカル・ディレクター(部長級)。ルノーのボブ・ベルやフェラーリのロス・ブラウンが有名です。他にもディレクターにはシャーシ専門のディレクターやチーフ・デザイナーなどもいます。
そして何よりも現代の技術の粋を集めたマシンを操るのが「F1パイロット」と呼ばれるエリート・ドライバーたち。会社で言えば社員さんですね。どんなに素晴らしいシャーシにパワフルなエンジンを載せても、彼らが他を圧倒するパフォーマンスを見せてくれない限り、勝利の美酒にはありつけません。
さて、うちの会社にジャン・トッドはいるのか? アロンソやシューマッハは? いえいえ大丈夫。明日に向かって、ビジョンと戦略を共有し、今日を戦い抜いてゆくうちに、うちにもあなたの会社にも、トッドやアロンソは育ってゆきます。そうです、つまりは人材育成も大切な経営の仕事なのです。「はい、アロンソ君、手を上げて!」・・・(シーン)・・・やっぱりトホホです・・・
気を取り直して、今夜のマイルスは27夜、今夜は「Someday My Prince Will Come」、日本語で言うところの「いつか王子様が」です。(あー、恥ずかし・・・)59年に「Kind Of Blue」で、モードの頂点を極めた第2期マイルスバンドでしたが、エバンスが去りアダレイが去り、そしてコルトレーンも巣立ってゆきます。トレーンとのお別れツアーは前回と前々回のご紹介どおり。この後マイルスはソニー・ステットを入れますが、彼はアルトとテナーを吹き分ける器用さこそあれど、所詮はただのバッパーですから、モード最前線のマイルスバンドで通用するはずもない。マイルスが次に組んだのはハンク・モブレイ。彼もなかなかのハード・バッパーではありましたが、常にとどまることを知らないマイルスの元で長く続くテナーマンではありませんでした。まあ、そうは言ってもレコードは出さなきゃいけないし、ステージにも立たなければいけない。モブレイ参加の第2期γバージョンでの録音と相成るわけですが、やはり不安に思ったのか、トレーンとフィリー・ジョーも呼んでの録音となりました。
1曲目「Someday My Prince Will Come」、モードだのバップだの言わず、ひたすらテーマをミュートで歌い上げるマイルスに、穏やかに答えるモブレイのテナー。そしてエバンスの後を受けた当初は、うろにきょろがついてたケリーの鮮やかなピアノ、チェンバースとコブとのリズム隊がしっかりまとまってきたことが実感できます。エバンス隊と双璧をなす、いやポスト・エバンス隊と呼んでも差し支えないでしょう。そしてトレーンのソロ。ここではトレーンも無茶しません。マイルスが作った雰囲気を壊さないように・・・でも、モブレイには「どうじゃ、おりゃ〜」的な演奏。そういう意味では、ある程度緊張感もはらんだ演奏になっていますが、演奏が終わった後、「ポコッ」っと舌を鳴らしたのは誰?
2、4、6曲目の「Old Folks」「Drad-Dogs」(これはコロンビアの社長Goddardをさかさまにした曲)「I Thought About You」は、1曲目とは打って変わってのバラード。それも「パリ発・・・」的なナルシズムではなく、モードの海を漂うダンディズムです。名演です。
一方、3、5曲目の「Pfrancing (No Blues)」「Teo」はマイルスっぽい肩で風切るブルース曲。「Teo」では、モブレイの出番なし、トレーンとの久しぶりの逢瀬を楽しむマイルスであります。
このアルバム、ジャケットのフランシス夫人(当時)といい、なにかとタイトル曲が有名ですが、新たにタイトにまとまったリズム隊とちょっと頼りないけど今までにないトーンのモブレイを得たγバージョン・マイルスの、スタジオ録音と言う完成度の高いアルバムなのです。ちなみに私の持ってるアルバムのジャケットは、タバコ・マイルス版(下)なのですが・・・