2007.02.08
アントン・ブルックナー 交響曲第4番 変ホ長調(1874年)
以前御紹介したブルックナーは5番でしたが、今回は一つ前、「ロマンティック」という作曲者自身の手で表題が付けられた変ホ長調の楽曲です。「ロマンティック」などといえば、すぐに恋愛とか、そういう類の雰囲気を想像しがちなのですが、ここでいう「ロマンティック」とは一般的に言う「浪漫」に近いもので、ブルックナーの自然に対する畏敬の念が綴られた、彼らしい作品です。作曲は1874年ですが、初演は7年後の1881年、ハンス・リヒター指揮ウィーンフィルによるものでした。ブルックナーの交響曲はそのほとんどが完成してもすぐさま初演されることはまれで、そのため加筆が多く、今でもノヴァーク版とハース版があります。それは、ブルックナー自身がより完全なもの、完璧なものを求めた結果でもあるのです。
ブルックナーは敬虔なカトリック信者であり、教会への奉仕としてオルガン演奏から離れることなく、またローマ・カトリック教会のための宗教曲を作ることを己の使命と感じていました。オルガニストとして成功を収めたものの、50歳の第4交響曲作曲当時、彼はとても貧しかったそうです。そんななかで作られたこの曲は、未完を含む彼の9つの交響曲すべてに通じる、「ブルックナー開始」と呼ばれる霧のようなトレモロから始まり、「フィナーレ交響曲」と呼ばれるとおり、それまでの楽章のすべての素材を投げ込んだ圧倒的なフィナーレで構成されています。これは、彼だけでなく当時の交響曲作曲家がすべて、ベートーベンの第9交響曲を目指したことがその理由に挙げられます。一方で、第3交響曲をワグナーに献呈するほど、同時代の人間としてワグナーを尊敬していた彼は、その影響を受けたロマンチシズムに溢れ、宗教観とあいまった神秘的で宇宙的なスケールと構成、あたかも教会の高い天蓋に向かって立ち上ってゆくような構成美がその特徴となっています。
とまあ、ムツカシイお話はいろいろあるのですが、とにかく聴いてみてください。澄んだ夜にいっぱいにちりばめられた星々を見たときに感じた宇宙観、それと少し違った、神に通じる宇宙観を垣間見ることができます。お勧めCDは、ギュンター・ヴァント指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団1998年録音版。ウィーン・フィルのファンなら79年のベーム指揮、バッハを尊敬していたブルックナー像に触れられたい方には、アーノンクール指揮アムステルダム・コンセルトヘボウもお勧めです。