2007.04.03

Movies

嫌われ松子の一生

上京してミュージシャンを目指すものの、挫折。夢を追い続けることもなく、彼女にも愛想をつかされ、自堕落な日々を送る青年、川尻笙(瑛太)。ある日、彼の元に2年ぶりに父、紀夫(香川照之)が訪れ、これまで話した事のなかった姉、松子(中谷美紀)の死と彼女の部屋の片づけを告げます。そこでこの青年が目にし、触れたものは・・・。って、イントロが映像もメッセージもテーマ性が強すぎて、ちょっとわかりにくいのではありますが・・・

昭和22年、福岡県で生まれた一人の少女は、女の子なら誰でもそうであるように、お姫様のような人生を夢見ていました。病弱の妹ばかりを思いやる父の気を引こうと、おかしな表情をしているうちに性癖になってしまった彼女。教師になった彼女に最初に訪れた災難は、修学旅行での盗難事件。人生の岐路が幸か不幸かのスイッチだとしたら、この時からすべてのスイッチは「不幸」の方に切れてゆきます。ファザコンというよりは、ごく普通の愛を求める彼女の前に現れる何人かの男たち。作家を目指す青年、不倫、ヒモ・・・。TVから流れる時代が華やかな昭和であることと対照的に、彼女の人生は彼女の夢からどんどんと遠のいてゆく。でも彼女は、いつでも強く前向きに生きてゆく。まるで昭和という時代そのもののように。そんな彼女のド派手な、いや実はささやかな人生も、時代が「昭和」から「平成」に変わる頃についにエンディングを迎えます。推理小説のようなファイナルサプライズも用意され、結局「昭和」そのものである彼女は、「昭和」という時代を彼女なりに疾風のように駆け抜け、そして新しい時代、「平成」によって葬られます。

監督の中島哲也はCF出身。それもあってか派手なエフェクトだらけの映像や、連続コマーシャルのような演出はちょっと疲れもしますが、そうでもしないと物語はただの悲劇に終わってしまったでしょう。おとぎ噺あり、ミュージカルあり。そうそう、龍洋一(伊勢谷友介)の乗っていた車は、私も乗っていたスカイラインDR-30、懐かしいです。

原作は読んでいませんが、昨年来の昭和物の「二匹目」などとうがった見方をせず、素直な気持ちで見ればいろいろなものが見えてきます。「何のためでもない、誰のためでもない人生」。人の一生とは、そもそもそういうものだと思います。自分と言う「個人」の利を追求する日々は、人生とはいえません。しかも、人生も愛も、掛け違えると一瞬にして表から裏になる。「人間の価値とは誰かに何かをしてもらうことはなく、誰かに何をしたか」。激動の昭和時代に追い続けて生きた松子に、ひそかにエールを送っている昭和生まれの私がいます。

人の一生とは、私の一生とは、風のようなものかもしれない。

出演:中谷美紀,瑛太,伊勢谷友介,香川照之

監督・脚色:中島哲也 2006年

BOSS的には・・・★★★☆☆

嫌われ松子の一生 通常版
中谷美紀

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おすすめ平均:4
1私に嫌われた松子の一生
5波乱万丈
5私にプレッシャーを与える「嫌われ松子」とはいったい何者なのだ!?

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