2007.04.18
「兵は詭道なり」その2?
In A Silent Way (1969) by Miles Davis
昨日は午前中2件のサポート、午後からは県外出張でした。日曜日の「風林火山」では、いよいよ武田晴信の諏訪攻めが始まりました。妹を嫁にやった先を攻める。なんと理不尽な・・・。まさに戦国時代、下克上の時代なのですねぇ〜。でも、ドラマ的にはこれまでの歴史説明的なものから、人間ドラマにシフトしつつあり、また楽しみが増えました。
「兵は詭道なり」。なんだか詭道だらけのような気がしますが、孫子が兵法を残したその根本原則は、やはり「戦わずして勝つこと」。その辺の話が実は前回、風吹ジュン演じる大井夫人が晴信の正室三条夫人に言って聞かせる場面でも出てきました。まさにあの言葉が、当時のあるべき姿だったのでしょうねぇ。公家の出の三条夫人には、戦の必要性自体が理解できないこともよくわかるのですが・・・。時代はつねに愚かに進んでゆくものなのです。
「最近マイルスはどうした?」というお話を沢山いただいております。最近ビデオを見る気楽さにかまけてしまってというのが現実なのですが、ビデオネタなら尽きることもないというのも本音ではあります。でもって、今日は久々にマイルスいきます。
In A Silent Way (1969)
マイルスの鉄壁のメンバーもこの頃入れ替わりがあったのは以前お話したとおり。自分の音楽のスタイルを変えてゆくためには必要な、いわばダーウィンの法則のようなものだったのです。1969年2月にスタジオ入りしたマイルスは、ショーター、コリア、ハンコック、ホランドに加え、ジョー・ザビヌルにジョン・マクラフリンを招聘。この年の一大イベント、ウッドストックに代表されるような、ロックやファンクにより近づいたこのアルバムを録音します。
新メンバーにはデジョネットを迎えながらも、このアルバムでは退団していたトニーを呼び寄せ、1曲目の「Shhh」では、メトロノームのような規則的なリズムを刻ませます。ホランドもいよいよフル・エレキベースで「ドドーン、ドドーン」と寄り添い、シンプルでかつ大地のようなどっしりとしたリズムを構築します。その上を、コリア、ハンコック、そしてザビヌルのキーボードが規則性を持たず浮遊します。マクラフリンのギターは、それら鍵盤音のさらに上を飛び交う。そこにマイルスがスパッと差し込んできます。新しいフレーズです。かっこいい、いや美しい。シャープであり、穏やかでもあり、大胆でもあり、ナイーブでもある。全2曲で構成されるこのアルバムの、1曲目と2曲目をつなぐかのようなザビヌル作の美しく穏やかなタイトル曲「In A Silent Way」は、月の表側と裏側のように、マイルスの表現を立体化する役目を果たしています。
素晴らしいメンバーを得たマイルスが、かの「カインドオブ」の時のように奇跡的な足跡を残したこのアルバム。当時、世評は真っ二つに分かれたようです。もちろん、カインドのマイルスしか信じないJAZZファンには、受け入れがたいものだったのでしょう。しかしマイルスは進化し、時代は70年代に向けて、モダンジャスもその姿かたちを大きく変えようとしていました。マイルス一人にモダンジャズの余生を託すような、そんな矮小な依存心は忘れ、変化する時代の中で、かつその時代をリードしようとクリエイトし続ける孤高のミュージシャンを、先入観やDNAを捨てて、ピュアに聴いてみましょう。この年の7月、アポロ11号が月面着陸に成功。日本では新宿西口のフォーク集会で機動隊と衝突、金田投手が400勝をあげ、男はつらいよが始まりました。このアルバムから数年間の彼の軌跡は、これまでのJAZZというカテゴリを捨てたという意味では、新しいアーティスト、マイルス・デイビスの誕生であり、またいちトランペッター、マイルス・デイビスが人生の中で最も輝いていた時期でもあると思うのです。
Sony
2002-08-20
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