2007.05.23

万葉の旅

山越の風を時じみ寝る夜落ちず家なる妹をかけて偲びつ 軍王

舒明天皇が伊豫の温湯の宮(道後温泉)に行幸の後、讃岐国安益郡(現在の綾歌郡ですよー!)に立ち寄った時の、軍王(いくさのおおきみ)の歌です。「山を越えて風が吹いてくる。一人寝の旅路の床で、家に残した妻が愛しい」というような意味です。

「風を時じみ」は「風が絶え間なく吹くので」、「寝る夜落ちず」は「寝る夜ごとに欠かさず、毎晩」、「かけて偲びつ」というのは「常に心から離れず愛しい」というような意味なのですが、これらの美しい言葉表現も現代ではすっかり使われなくなっていますよね。地元香川の歌ですし、堂々とした中に、ただ一人の女性を思いやる優しさがこもっているのでご紹介してみました。個人的には、字余りはどうもしっくりはこないのですが・・・。ただ、万葉集でも第一集のこのあたりの歌は、やはり格調高いですよね!

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