2007.06.13

JAZZ

「3日目にしてこのありさま・・・」

まだまだ週のなか日ではありますが、結構きてます、マリックさん。今日も午前中から外出予定、夜は同友会の役員会があります。なわけで、全くもって原因結果の法則には沿ってはおりませんが、久しぶりにマイルスでも行きましょうか。

ところでKさんYさん、フィルモアの感想はいかが?

A Tribute To Jack Johnson (1970)

マイルスがかつて映画音楽に携わったことを御存知の方はなかなかのジャズ通ですな?そうです、あの水銀のようなと表現されていた頃のマイルスさまの音色に全編染まった「死刑台のエレベーター」でした。そして13年ぶりにサウンドトラックの仕事が舞いこんできました。「ジャック・ジョンソン」、黒人ボクサーの生涯を描いた物語でした。たった13年、しかし10年は一昔、お祭りはふた昔。あの頃の真っ只中JAZZは、13年後には・・・・。

いきなりマクラフリンのフェンダー”ジャグアー”のカッティングとビリー・コブハムのロックビートから始まる「ライト・オフ」。ロックですがな、完璧に。続くマイルスもコブハム&ヘンダーソンのリズム隊に乗って、縦横無尽かつメロディアスな完璧な演奏。60年代後半のマイルスサウンドの象徴がトニーのドラムスであったように、変化に飛んだこの時期の共通項といえば、マクラフリンのサウンドでした。退団を希望していたショーターの代わりに使ってみたというグロスマンのソプラノも、フレーズが新しい、明らかに70年代のフレーズ。ハンコックも初めて触れたファルフィッサ・オルガンをとってもブラックに弾きこなしています。

そしてです、18分30秒あたりから始まるアレ、そうあの「ジャック・ジョンソンのテーマ」、マイルスも気に入って、晩年まで繰り返し演奏したあのアレが、連続17回、ジャブからフック、ジャブからストレートと打ちのめしにやってきます。ナカヤマさんでなくても、たまりましぇん。KOでしゅ。しかし、現代の私どもはお気楽にこれを聴いておりますが、ジョンソンがチャンピオン当時の20世紀初頭から、この演奏の当時まで、黒人を取り巻く状況には何の変化もありませんでした。

「明日はリングに倒れろ、さもないと首吊りだぞ・・・KKK(クー・クラックス・クラン)」

2曲目は、打って変わって静寂がベースのバラード。ヘンダーソンのダークなラインの上で、マイルスはオープンなメロディを展開します。リングの上をすり足で獲物を追い詰めるジョンソン。音楽はいつの間にかテオの編集で「In A Slent Way」の「Shhh」がかぶせられ、エンディングは俳優ブロック・ピーターズのナレーション、「俺はジャックジョンソン、ヘビー級の世界チャンピオンだ。俺は黒人だ。それがいつもついて回る。黒人で結構。誰にも忘れさせやしないぜ。」

マイルス自身が語るとおり、「In A Silent Way」以降の数年間の演奏は、すべて新鮮で新しい挑戦であり、どれもこれも通過点というよりは、それぞれが頂点でした。ちなみにCD5枚組みのコロンビアお得意の「ザ・コンプリート」もありますが、この2曲が入った1枚物で十分です。「死刑台」が50年代後半のマイルスの音を凝縮していたように、このアルバムでは70年代初めのマイルスが、マイルスの創造力とテオ・マジックにより新しい結晶として凝縮されています。

A Tribute to Jack Johnson
Miles Davis

おすすめ平均:4.5
5"I'm Black"
4John McLaughlin
5本当はサントラ盤!

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