2007.06.27

万葉の旅

三輪山をしかも隠すか雲だにも情(こころ)あらなむ隠さふべしや  額田王

この歌は、額田王作ということになっていますが、実は作者不明だそうです。いずれにしても気品漂い、また情に溢れた歌です。「眺めのよい三輪山をもっと見ていたいのだけれど、にわかに雲が隠してしまった。たとえ雲であっても、情けがあってほしい。隠さないで欲しい。」というような意味ですが、最後の「隠さふべしや」という句の「や」は、斉藤茂吉氏によるとこれは強い反語で、「隠すべきか、いや決して隠すべきではない」という強い思いが表されているそうです。額田王は抒情詩人として知られていますが、この結句はまさに彼女の真骨頂です。

自然を擬人化すると、どうしても全体があいまいになってしまうものですが、この歌は彼女の才によって、作者の心を痛いほど伝えることに成功しています。天智天皇でなくても惚れちゃうかな?

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