2007.09.27
JARHEAD 邦題:ジャーヘッド
NYタイムズが戦争文学の最高峰と絶賛したA・スオフォードのベストセラー小説を、「アメリカン・ビューティー」のサム・メンデス監督が映画化したいわゆる戦争裏物です。タイトルの「ジャーヘッド」とは、ジャー(日本で言うところのお湯とか入れるポット)のように刈り上げた頭(=頭が空っぽの海兵隊員)という意味。若くして海兵隊に志願、今から15年ほど前に中東で起こった、湾岸戦争に従軍することになった主人公の目に映ったかの戦争とは・・・。
1989年、18歳のスウォフ(ジェイク・ギレンホール)は父親と同じ道をと海兵隊に志願します。待ち受けていたのは当然の厳しい新兵訓練。もちろん、ブート・キャンプどころではありません。いわば虐待に近い訓練に耐え抜いた彼は、たった1発の弾丸に命を懸ける狙撃兵として偵察狙撃隊STAに入隊、エキスパートとしてのキャリアを磨いてゆきます。
ある日、CBSでイラクのクウェート侵攻が報道され、「いざ鎌倉!」ではなく「いざクウェートへ!」と若き兵士たちのボルテージは最高潮、アドレナリンは一気に沸騰します。そしていよいよ戦地へ。しかしそこは、彼らの思い描いていた戦場とは程遠く、敵の姿のない一面砂漠の世界でした。
それでも、戦場であるがゆえに戦いはいつかは起こり、自分か敵か、どちらかの命は失われる。「その時」をひたすら待ち続ける日々。退屈と衝動、苦悩と狂気の狭間を若い心が揺れ動きます。そしてついにスウォフにも実戦の時がやってきます。
湾岸紛争以来、「空爆とメディア」が主人公となってしまったアメリカの戦争は、現在もイラクで続いています。華々しい初戦の後、現地に送り込まれた若き兵士たちの退屈で、しかも戦場であるが故の死との背中合わせの日々が、メディアを通してしか戦争に触れることのない私たちに、違った面からの「戦争の意味」あるいは「生きることの意味」を問いかけてきます。
大上段に構えて「戦争の意義」や「命の尊さ」を訴えていない分、じーんと迫ってくるものがあって、それは戦争映画というよりは、人間ドラマに近いといえるでしょう。スウォフという一人の若者(子供)が、この異常な環境を通して(でも)成長してゆく様は、ある意味「人間賛歌」と「自己を見つめることの大切さ」を教えてくれます。
共演のピーター・サースガード、ジェイミー・フォックス、クリス・クーパーなどのオスカークラスの演技派も、いい味出してます。戦争映画の嫌いな方に是非お勧めいたします。
出演:ジェイク・ギレンホール,ピーター・サースガード,ルーカス・ブラック,クリス・クーパー,ジェイミー・フォックス,ブライアン・ケイシー
監督:サム・メンデス 2005年
BOSS的には・・・★★★★☆