2007.09.14

万葉の旅

ひむがしの野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ  柿本人麿

はいはい、有名な歌ですよね。万葉集といえばこの歌を思い浮かべる方も多いでしょう。この歌は、前回紹介した軽皇子一行との旅の朝に読まれたものです。この歌、季節感が不明な方も多いと思うのですが(私も実はそうだったのですが・・・)、これかの秋の歌だそうです。人麿的には、すこし女々しく感じもするのですが、素直で浪々とした響きのよい調子は、彼ならではでしょうね。また、前夜(?)の悲しくも重々しい作風から一転して、自然をありのままに受け入れながら無の心持を表せるのも、彼の力量のなせる業なのでしょう。

実はこの歌、古くは「東野(あずまの)のけぶりの立てるところ見て」などと読まれていたそうです。それを現在の訓読みにしたのが、江戸時代の僧侶で国学者の契沖や、賀茂真淵らだということで、彼らの功績にも敬意を忘れないよぅにしなければ・・・。古調では、これほど有名にはなっていなかったでしょうから!

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