2007.11.07
LITTLE MISS SUNSHINE 邦題:リトル・ミス・サンシャイン
「家族の絆とは」を問いかける、いわゆるロードムービーです。リトル・ミス・サンシャインとは、ちびっこ向けのミス・コンテスト。ロードムービー自体がイメージしにくい日本では、このちびっ子ミスコンも理解しにくい。そういう意味では、アメリカらしさの断層から染み出てくる家族愛の物語と言えるでしょう。
主人公のオリーブ(アビゲイル・ブレスリン)は、小太りの眼鏡っ子。そんな彼女の夢は、美少女コンテストで優勝することです。家族はと言えば、協調性ゼロで日々トラブルが耐えない。いや、もしかするとどこの家庭にも、多かれ少なかれそこココにあるような家族かもしれません。
旦那に喫煙を隠しながらおんぼろのユーノスに乗り、ワーキングマザーとして一家を支える母シェリル(トニ・コレット)、「常に勝ち組であれ!」という独自の成功論を振りかざし、見込みのない出版に夢を託す「負け組」の父リチャード(グレッグ・キニア)。ニーチェかぶれで、夢がかなうまでと沈黙の誓いを実行している空軍パイロット志望の兄。ヘロイン中毒で老人ホームを追い出された毒舌ぶっ飛び祖父(アラン・アーキン)に、同姓への失恋で自殺未遂をおこしたプルースト研究者でゲイの伯父。このへんもいかにも現代アメリカの持つ病巣の縮図でもあるようです。
そんな一家に転機が。ある日一本の電話があり、オリーブはコンテスト地区予選を優勝者の失格から繰り上げ突破、全国大会出場を果たします。そしてとんでも一家6人は、彼女のコンテスト出場のため、黄色のポンコツのワーゲン・ミニバスに乗り込み、アリゾナから一路「夢の国」「夢がかなう場所」「パラダイス」カリフォルニアを目指します。この辺も、西部開拓の幌馬車のイメージでしょうか?
道中で繰り広げられるドタバタ。そして、終盤のコンテストの模様。これらは、ある意味「勝ち組」に入ることが強迫観念にもなっている現代アメリカ、一方に残る古き良き伝統のアメリカと悪しき慣習のアメリカに対するアンチテーゼであり、最終的にはロードムービーのお約束通り、「家族の絆」というミニマムの集団がすべての始まりであるという、西部開拓時代への郷愁へと落ち着きます。
結局のところ、アメリカでしか設定しえない映画ではあるのですが、コメディとして見ても、結構楽しめるのではないでしょうか?さまざまな受賞映画であることをとっぱらって、素でみた方が楽しめる映画だと思います。細かいところでは、ちょっとムリムリも目立ちますが、ドライにみれる家族愛の秀作でしょう。
出演:アビゲイル・ブレスリン,グレッグ・キニア,トニ・コレット,アラン・アーキン
監督:ジョナサン・デイトン,ヴァレリー・ファリス 2006年
BOSS的には・・・★★★☆☆