2008.01.28
CINEMA PARADISO 邦題:ニュー・シネマ・パラダイス
巷では、いや一部のコアな映画オタクには、「映画好きのためのオマージュ」あるいは「名作中の名作」とか言われているこの映画。いまさらではありますが、そんな名作をBOSS風にタテ・ヨコ・ナナメから見てみましょう!
ローマで映画監督として成功を収めたレネーラは、多忙で愛のない生活を送っていました。彼の本名は、サルヴァトーレ・ディ・ヴィータ。幼い頃彼は、「トト」と呼ばれていました。そんな彼の元に、ある人物の死去の知らせが届きます。その人物の名はアルフレード。かつて幼いころ、父のように慕っていた人物でした。
知らせを聞いた彼の脳裏を、幼い頃から青年時代のほろ苦い思い出が、走馬灯のように駆け巡ります。キーは、プルーストにとってのマドレーヌのように、彼にとっては映画、そして田舎の映画館「シネマ・パラダイス」でした。
物語は3部に分かれます。まずは第2次世界大戦中の幼少時代。映画好きのトトは、教会の映画館「シネマ・パラダイス」で映写技師をしているアルフレードを慕い、映写室に足げく通うようになります。そしてこの時代は、アルフレードを襲った悲劇とともに幕を閉じます。この時代の人々や町並み、そして上映される時代物の映画たちが最も印象深く、「映画好きの・・・」と呼ばれる所以となります。
2部目はサルヴァトーレの青年時代。新しくなった「ニュー・シネマ・パラダイス」で、映写技師として働く彼の、切ない恋愛時代です。王女と兵士の100日の逸話実践のシーンや夏の野外映写大会など、シチリアの美しい自然をバックに、愛と夢が育ち、光り輝きます。そう、まるで映画のワンシーンのように・・・。(その意味は後ほど)
そして3部目は、アルフレードの葬儀の為に30年ぶりに帰郷した彼の中年時代。さまざまな懐かしきものとの再会。そして彼は、30年ぶりに別れ別れとなったエレナと再会します。この辺は、ひどく説明的になっていてくどく、まるでワイドショー並み。特に幼少期の慕情的な扱いとはずいぶん違っているのですが、それはもしかすると、この映画の隠れた主題なのかもしれません。
スクリーンに次々に映し出される、ヒーローやヒロインに一喜一憂する人たち。貧しい暮らしの中の数少ない娯楽として、人々に夢を与えてくれた映画と登場人物。しかし、時代は流れ、人々の価値観は変わり、映画はもはやただの夢でしかないことが明らかになってしまっている。
若き日の恋、実らなかった夢、果たせなかった約束。それらもすべて銀幕の物語と同じなのだと、私はここで気づかされます。過ぎ去った時間を、フィルムとして残すこと。それは、現実の生活へ向かうための一つの決断であり、かつての夢たちへの決別でもあるのではないかと。
アルフレードがトトに残した遺言は、「映画は夢」であると同時に、「それは現実ではない」と教えてくれているような気がするのですが・・・。
ということで、決して一般的に言われているように素直にこの映画を見ることができない天邪鬼な私ではあります。モリコーネの主題歌にほだされていると、単純に「映画、万歳!」ってことになってしまいますが、タテヨコナナメから見ても、この映画は実にいい映画です。
「ヴォーロ・イタリアーノ!」
なお、この映画をオマージュとして見られたい方は「劇場版」を、「映画は夢」と認識されたい方は175分の「完全版」をお勧めします。
主演:サルヴァトーレ・カシオ(少年期),マルコ・レオナルディ(青年期),ジャック・ペラン(中年期),フィリップ・ノワレ,アニェーゼ・ナーノ
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ 1989年
BOSS的には・・・★★★★☆