2008.01.02
SHINE 邦題:シャイン
天才ピアノ少年と呼ばれながら、精神を病み、そして再び音楽界に復帰した実在のピアニスト、デイヴィッド・ヘルフゴッドの半生を描いたヒューマン・ドラマ。作品中のピアノ演奏はヘルフゴッド自身の演奏です。
デイヴィッドは、音楽家を夢見て挫折しサーカス団員などを経て廃品回収などで生計を立てる貧しい一家に生まれます。子供に自身の夢を託す厳格な父親は、一方で独善的な愛情を息子に注ぎ、裕福な人たちへの偏見的な嫌悪感だけで、息子のアメリカへの音楽留学の夢を絶ちます。失意のデイヴィッドの中で、何かが変わりはじめます。全豪声楽器楽コンクールで優勝こそ逃したものの、英国王立音楽院から奨学生として招かれた彼は、暴力的にこれを止めようとする父を振り切り、イギリスへと旅立ちます。
音楽院では、自身がラフマニノフの前でピアノ演奏したというパーカーに師事。パーカーはデイヴィッドの才能を高く評価し、彼を鍛え上げます。幼い頃から父親に、いつかはラフマニノフ3番を弾いて聞かせてくれと言われていたデイヴィッドは、コンクール曲にこれを選びます。
技術だけでなく見も心も練習に注ぐ彼は、時折奇行も目立つようになります。そしてコンクール当日。見事な演奏を披露した彼は、曲が終わると同時にステージに倒れます。そして、彼の第2の人生がここから始まることになります。
映画自体は、フラッシュバックのように、時折行ったり来たりするので、ちょっとわかりにくいところもあるのですが、息子に対するとても強い愛情をうまく表現し伝えることの出来ない父親は、見ていて憎悪や嫌悪を抱くものの、はたして私たちが愛する対象に対して、彼のような接し方しかできていないのではないかと言う危惧を思い起こさせます。
映画自体は、愛が音楽から始まるとか、愛こそすべてとか、そういう陳腐なものに陥ることなく、ひとりの人間の半生を通して、生きること、生きていることの大切さを教えてくれます。
響き渡るラフマニノフの3番が、2番のようなシンプルな美しさだけでなく、対象を探してもだえ苦しむ激しさや情熱をほとばしらせ、この曲が人生そのものの縮図であることが伝わってきます。そして、音楽とは常識や良識といった平常心を超えた、人の心に近い場所に住んでいると言うことを、あらためて教えてくれる映画でした。もちろん、ハンカチ必携です。
出演:ジェフリー・ラッシュ,ノア・テイラー,アレックス・ラファロヴィッツ,アーミン・ミューラー・スタール,リン・レッドグレーヴ,ジョン・ギールグッド,グーギー・ウイザース,ソニア・トッド
監督:スコット・ヒックス (1995年)
BOSS的には・・・★★★★☆