2008.02.12
ブルックナー 交響曲第8番 ハ短調 (1884)
ブルックナーの交響曲はこれまで、第4番と第5番をご紹介しました。今日は、ちょっととばして第8番です。今日はブル8の心境ですので・・・。
ブルックナーが、この曲の創作に着手したのは1884年、第1稿の完成が1887年。この間、第7交響曲初演の成功がありましたが、一方で83年にはワーグナーの死去と葬儀でのオルガン演奏、86年のリストの死、そして60歳を過ぎた体力の低下から自らの死を予感するようになるなど、これまでの彼の絶対音楽「陽の時代」から、標題音楽「陰の時代」に転じてゆく時期の初めての作品ではないでしょうか。
ブルックナーはこの曲で、これまで試みていた「生と死との闘争」だけでなく、「充足されることのない希望」やもっと身近な「人生の不安や苦悩との戦い」を表現したと言われています。特に第一楽章の終わり、トランペットとホルンが奏でる調べには「死の予告」が織り込まれ、この楽章は「死の時」で終わると、彼自身語っています。
それでも、彼の個性である「敬虔なる宗教心」「宇宙的なるもの」の表現は、さらに洗練と成熟を見せており、重厚な管弦楽の綴れ折りと天に舞い上がるような、いや全能の天から降り注ぐようなコラールは、姑息な日々を送る貧しい心を、自然なありのままへと解き放ってくれるようです。
直感性と瞑想性、優しさと厳しさ、深い悲しみとそれに耐える心、襲いくる孤独とそれと戦う強靭な精神。堂々たるテンポと壮言な音の洪水の中にあって、この曲を含むブルックナーの後半の作品は、「ゲルマン人の不器用さ」の向こう側にある、広大な自然の中や宇宙の中に存在するたったひとつの人間の心を捉えて離すことはありません。だからこそ、今日のアルバムのようなクナッパーツブッシュやヴァントに名演が多いのでしょうか?
旋律の動きの美しいこの曲は、ブルックナー自身、最も美しいメロディを持った作品として生涯愛したそうです。悲しみの淵に立ち、孤独の霧に覆いつくされた時、ブルックナーとクナの両手に溢れんばかりの「愛と慈悲」に包まれて・・・。心が涙を流します。
ちなみに、クナは第一稿、ヴァントは第2稿ハース版です。
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リマスタリングに問題アリ。
悪趣味な復刻
クナに無条件降伏。最高の「ブル8」だ!
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