2008.02.12
ショパン ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21(1829)
ショパンが特に女性に人気があるのは、技巧ではなく心の表出とでも言うべき清らかで美しいその旋律のせいでしょう。生涯、ピアノによる作曲に心血を注いだショパンが、ワルシャワ音楽院を卒業した19歳の時に書かれたのが、このピアノ協奏曲第2番です。
美しい容姿をもち、女性のように小さく柔らかい手と憂愁を帯びた繊細な旋律は、彼を「ピアノの詩人」と呼ばせ、またロマン派音楽を代表する作曲家とも言われています。確かに、彼を取り巻く女性たちとの恋の物語が、調べとして私たちを弾きつけることも間違いのないことです。
ジョルジュ・サンドとの9年におよぶ交際、そして劇的な破局から、「24の前奏曲集」「幻想曲」「バラード第4番」「英雄ポロネーズ」「舟歌」「幻想ポロネーズ」などが生まれました。今日ご紹介するこの2番も、声楽を学ぶ女性グワトコフスカへの初恋の結実だと言われています。
また彼は、ワルシャワに生まれ、前述のようにワルシャワ音楽院を卒業しますが、直後ヨーロッパに演奏旅行に出発。その間に母国ポーランドには革命の嵐が吹き荒れ、二度と母国の土を踏むことが出来なかったことに対する望郷の思いも、彼の作品に大きな影響を及ぼしていると言われています。
短いトンネルを抜けた後のように、アルゲリッチのピアノが響き始めた瞬間に、景色は一変します。彼女独特の揺らぎと閃き、そして想いの極みの強靭なアタック。ロストロポーヴィチ&WNFが苦悩するショパンをしっかりと支えています。切なく、切なく、ひしひしと切ない名演です。
アシュケナージのピアノ、ジンマン指揮ロンドン交響楽団の演奏は、作者の若々しさがそのままに表現された演奏です。ショパンと同じようにロシアを後にしたアシュケナージの、叙情性以外の思いが込められているのでしょうか?こちらは純粋に、青年の不器用さ青臭さも併せ持っているような気がします。