2008.03.20

Movies

BREAKING AND ENTERING 邦題:こわれゆく世界の中で

てっきりイギリス物かと思いましたが、アメリカ映画でした。さすがはアンソニー・ミンゲラ、「イングリッシュ・ペイシェント」むんむんしてます。再開発が進むロンドンの下町を舞台に、一人の男性と二人の女性が、昨日から今日へと続く閉塞感の中で、それぞれの明日を見出してゆくヒューマンドラマ。これをラブドラマとして見てしまうと、ただの不倫メロドラマになってしまうかも・・・。真実の愛、偽りの愛が中心ではありますが、混沌と苦悩の現代社会を生きる老若男女の人間ドラマです。

ロンドンの下町、キングス・クロスの再開発を手がけるウィル(ジュード・ロウ)とサンディ(マーティン・フリーマン)の経営する設計事務所に窃盗団が侵入、コンピューターなどが盗まれます。一度ならず2度も窃盗団に狙われたウィルは、サンディと二人で夜中のオフィスを見張ることにします。パートナーのリブ(ロビン・ライト・ペン)、彼女の娘ビー(ポピー・ロジャース)との関係がギクシャクしていたウィルにとって、家を離れるのは救いでもありました。

ある夜、オフィスに侵入しようとする少年を発見したウィルは、彼を追いかけ、ある貧しいアパートの一室にたどり着きます。そこにはボスニア移民として貧しく暮らすアミラ(ジュリエット・ビノシュ)が息子ミロ(ラフィ・ガヴロン)とつつましく暮らしていました。

ウィルは良くも悪くも、現代を生きる典型的な男性。優柔不断で愛に飢えながら、愛をその手で掴もうとはしない。二人の女性、リブとアミラは対照的に描かれています。しかし結局のところ、彼女たちは自らが守るべきものを守る為に愛と戦い、愛に屈します。

子供を守ろうとする母の強さは、古今東西を問わない。子供があらぬ道に足を踏み入れようとすれば、なりふりかまわずそれを阻止し、また脅威から命を賭してでも守ろうとする。この言葉に出来ない本能のなせる行動は、私たち男どもにはなかなか理解できないものです。むしろ、子供の一人であるかのように、自立しながらも相手に依存してしまう男のサガの弱さを、この映画はびしびしと訴えてきます。

そして複雑な人間模様の中で、その母の偉大なる愛が、子供のささやかな愛や淡い夢を、冷酷に引き裂いてしまうこともある・・・。

全体にはストリート感覚の軽いタッチなのですが、細かい演出や台詞はさすがです。そういう意味では、イングリッシュ・ペイシェントよりははるかにリアリティにあふれてる。昨日も今日も、この広い世界、いや日本のどこかでも起こっていそうな物語。だからこそ、ずっしりと訴えてくるものがあります。

「愛とは傷つけあうこと」 そうなんですよね。誰かを愛すれば、どこかで誰かが傷つく。誰かを傷つけても守り通す愛が、貴方にはありますか?それとも、誰かを傷つけるからと、愛することをやめられますか?

出演:ジュード・ロウ,ジュリエット・ビノシュ,ロビン・ライト・ペン,マーティン・フリーマン,レイ・ウィンストン,ヴェラ・ファーミガ,ラフィ・ガヴロン,ポピー・ロジャース,ジュリエット・スティーブンソン

監督:アンソニー・ミンゲラ 2006年

BOSS的には・・・★★★★

こわれゆく世界の中で

ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
2007-09-19
Amazon.co.jp ランキング: 5352位

おすすめ平均:4.5
5キャスティングの妙
4丁寧な描写に引き込まれました
5子供のいるカップルにおすすめ

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