2008.03.22

Movies

DEPUIS QU'OTAR EST PARTI... 邦題:やさしい嘘

今回はフランス映画、正確にはフランス/ベルギー合作?お客様であり師匠であるかたのご推薦映画です。タイトルは当然フランス語。英語で言えば、「SINCE OTAR LEFT」。「オタール去りし後」って感じですが、まあ配給会社がわかりやすく「やさしい嘘」と命名。でも、それってかなりバイアス、かかりませんこと?

ソビエトから独立したものの、貧しい国グルジアに住む祖母・娘・孫娘の3世代の女性たちが織り成す、女性視点から見た家族の物語。ですから対峙するものとして、スターリンや戦争や家を空ける男たちが語られます。主題は「嘘」ではなく結果としての「家族の愛と自立」ではないでしょうか?

グルジアの首都トビリシに暮らすエカおばあちゃん(エステール・ゴランタン)の唯一の楽しみは、パリで暮らし始めた医者の卵である息子のオタールからの便り。そんな母親に嫉妬する娘マリーナ(ニノ・ホマスリゼ)は、旦那がアフガニスタンで戦死している。そしておばあちゃんっ子の孫娘アダ(ディナーラ・ドルカーロワ)は、祖母や母の時代、ソ連時代ではなくグルジア時代の女性として、貧しいけれど夢を持って勉学にいそしんでいます。

おばあちゃんが別荘に出かけたある日、一本の電話が。それは、おばあちゃんの愛してやまないオタールの事故死の知らせでした。しかし二人はそれをおばあちゃんに伝えることが出来ない。そして死んでしまったオタールに代わって、おばあちゃんに手紙を書き、それを読んで聞かせるという生活が始まります。

アダがおばあちゃんに読んで聞かせているのが、プルーストだったり、ソ連時代にこっそりフランスから取り寄せた書籍を売り飛ばして逆にパリに向かうとか、グルジアという底辺から見た花の都パリ、そして貧しくても平和なトビリシに対して、オタールの命を奪った大都会パリという対比があちこちにちりばめられ、それはエンディングにも引き継がれます。

女系3世代と大きな変化の時代という縦糸に、地理的だったり生と死などの横糸を重ね、そういう立体的な構図の上にキャスティングされた3人がまた絶妙です。とくにエステール・ゴランタンは85歳にして女優デビューを飾り、本作が2作目にもかかわらず、いい味だしてます。娘役のグルジア人舞台女優ニノ・ホマスリゼも、舞台独特のあくの強さをうまくコントロールして、これまた素晴らしい演技。

で、女性とはそもそも嘘の許される種族であるという私の持論とか、彼女たちのついた嘘が「やさしい嘘」かどうかなんてどうでもいいわけで、人は人に対してどう関わっていくべきなのか、母は子供に何を伝えるべきなのか、あるいは個として夢を追うとき何を捨てなければならないのかとか、地味〜な映画からいろんなことを感じさせてくれます。ぜひ、こころに余裕のあるときに、じっくりとご覧ください。

出演:エステール・ゴランタン,ニノ・ホマスリゼ,ディナーラ・ドルカーロワ

監督:ジュリー・ベルトゥチェリ 2003年

BOSS的には・・・★★★★

やさしい嘘 デラックス版

ショウゲート
2005-03-11
Amazon.co.jp ランキング: 5049位

おすすめ平均:3.5
2グルジア差別の、フランス人の自己満足映画
5おばあちゃんの本当
43つの“やさしさ”の総和

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