2008.03.30
Les Invasions barbares 邦題:みなさん、さようなら
タイトルというのは、とっても難しい。特に、ろくな外国語教育を受けられない私たち日本人にとって、あちゃら物の紹介となると、原題とは全く関係なく、「売れろ、当たれよ!生めよ、増やせよ!」とばかりにとんでもない邦題がついたりします。
プロモーションの予算がないものは、原題がそのままカタカナになってて、それはそれで悲しいけれどよしとして、潤沢な予算があればあるほど、立派なコピーライターが呼ばれて、それこそとんでもない邦題がついてしまう。
これって、どっかの国の大量虐殺を歴史的に正当化するアジテーションにも似てると思うのは、私だけ?もちろん、原題の直訳よりも、全然違った邦題の方がいい例も沢山ありますから、話としてはヤヤコシイ。
で、今日ご紹介する映画は、原題だと「蛮族の侵入」、邦題は「みなさん、さようなら」。さてさて、皆さんはどちらがよかったと思われますか?
不治の病に冒された社会主義者の元大学教授と、彼を取り巻く家族・友人との人生最後の時期のかかわりを通して、「人とは」「死とは」「愛とは」などなど、人間の生き様を読み解いてゆく、地味〜なドラマ。もちろん、人の死期を扱った単なるお涙頂戴映画としても見ることはできますが・・・。それなら、巷にあふれるゴミのような洋画・邦画の方がずっと面白いと思います。この映画のテーマは、「死」ではなく「生」です。素晴らしい映画です。
主人公のレミは歴史学の教授。しかし彼にはろくな著書がない。なぜなら彼は、根っから人間らしいつまり泥臭い人間であるから。彼が歴史家であることは、重要な意味を持っています。
有史以来人類の行ってきた侵略や蛮行。それは「9.11」にまで言及しますが、それらの愚かな行為を否定しつつも、自らは享楽的社会主義者を標榜し、彼に反発して生きてきた息子を野心家の資本主義者と言い切ります。
人なら誰しも持っている理想と現実、過去と未来、信仰と日常、理性と欲望。そういった対峙の中で、瑣末なことに追いまくられる日常と、その積み重ねであり結果である人の人生。それは、この物語では、父と息子、資本主義と社会主義、キリスト教とイスラム教、そして息子のフィアンセと父の愛人の娘との生き様の対峙にも現れます。
若い時は過去が少ない。だから人は、今という時に一生懸命になれ、未来に夢を託す。でも、歳を重ね死を意識し始める頃には、沢山の過去を抱え込み、これまでと同じだけの未来を持てない事実を受け入れ、人は過去を生きるようになる。今を忘れて。自分が死ぬことに意味を見出せないまま、家族や友人たちとの交流の中で、最後の瞬間までこの「今」を生きることを理解する主人公。
結局人は常に、「死」という「蛮族の侵入」がいつ訪れるかわからないことを知っていなければならない。そしてそれを受け入れなければならない。
主人公が、少年時代の彼を夢中にさせたイネス・オルシーニやフランソワーズ・アルディを回想するシーン。それは駄目なんだと思いながら、彼の気持ちを理解している自分がいます。最後は、フランソワーズ・アルディの「友情」が流れる中、それぞれがそれぞれのあるべき人生に戻ってゆきます。
私ですか?何よりも、ラザニアのボローニャソースが飛び散ったことが悲しい・・・^_^;
この映画は深いです。この映画を理解できる方は、無条件で信頼します。長々となりましたので、ストーリーは省略いたします。いいたい事は沢山あるのですが、またゆっくりと酒でも飲みながら、語り明かしましょう!
出演:レミー・ジラール,ステファン・ルソー,マリー=ジョゼ・クローズ,マリナ・ハンズ,ドロテ・ベリーマン
監督:ドゥニ・アルカン 2003年
BOSS的には・・・★★★★★
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交通安全に気を付けて帰ります。
大笑いしてはいけないのかもしれないが
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