2008.04.09
死に花
久しぶりの邦画は、S名師匠のお勧め。太田蘭三の同名小説を基に、金庫破りに情熱を燃やす老人たちの姿を描いたコメディです。
東京の郊外にある高級老人ホーム。そこに暮らす元映画プロデューサーの菊島(山崎努)は、同じホームの入居者で先立った友人の源田(藤岡琢也)の遺品の中に、「死に花」と題されたノートを見つけます。何とそこには、隅田川に面するとある銀行の地下まで穴を掘り、金庫から金を奪うという奇想天外な計画が記されていました。
親しくなった明日香(松原智恵子)の「ひと花咲かせましょう!」という誘いに乗り、ホーム仲間の元銀行支店長だった伊能(宇津井健)、女好きの穴池(青島幸男)、ほら吹きの庄司(谷啓)たちを巻き込んで、老人たちは大胆な計画を実行することに。
ところが、穴掘りの取っ掛かりの川縁にはホームレスの先山(長門勇)が住んでいる。喜劇的になんとか説得に成功して仲間に加え、毎日へとへとになりながらも着実にトンネルは銀行の直下に近づいてゆきますが・・・。
70歳台の少年時代に戦争を体験した老人たちが、明日など夢見ることなく死に向かってゆくことにがんとして抵抗し、「ひと花」「ふた花」咲かせようと奮闘する姿には、ささやかなエールを送ってしまいます。銀行強盗を「夢」とは言いませんが、叶えたいと願うことをいつまでも持ち、それに向かって日々を過ごすことの人間らしさは、大切だなと実感。30年後には自分も、何かそんなものを持ち続けていたいなと思いました。
師匠のお話にも出た、源田さんの葬儀のシーン。年老いた夫婦に対して明日香の「心中」という言葉が心に残りました。こういう場合、「心中」もポジティブな愛のカタチになりえるのですね!
個人的には、菊島にあこがれる新米職員の井上演じる星野真里にちょっと惹かれたりして・・・。
映像としては007のパロとか、喜劇の基本を用いてはいますが、同じ通行人が二回通ったり、カメラアングルがありきたりだったり、無駄なシーン、無用に長いシーンなどがあって、ちょっと雑なつくりでした。やはり喜劇だろうがなんだろうが、スチール一枚一枚をきちんと積み重ねるような緻密な映画つくりをして欲しいものです。2時間の映画にするには、原作的に難しいのかな?
キャストもこれだけの名優をそろえると、本来主人公の山崎努や宇津井健の名演も霞んでしまう。森繁久彌なんか、何でっていう感じ。ちょっとそれで客寄せか話題つくりをしてしまったのかな?いや〜、シーンの構成とか脚本とかをもっと緻密に練れば、もっともっと味のあるいい喜劇になったと思うのですが・・・。
出演:山崎努,宇津井健,青島幸男,谷啓,長門勇,藤岡琢也,松原智恵子,星野真里,加藤治子,森繁久彌,小林亜星,ミッキー・カーチス
監督:犬童一心 2004年
BOSS的には・・・★★☆☆☆
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