2008.04.05

Movies

The Legend of 1900 邦題:海の上のピアニスト

先日、原題と邦題の違いに関するお話をしましたが、この映画主題vs副題って感じでしょうか?主人公は確かに「海の上のピアニスト」なのですが、物語は「1900」という名前のピアニストの伝説の物語、ゆきみさんご紹介の映画です。

時は1900年。ヨーロッパからアメリカを目指して押し寄せる大量の移民と、上部デッキにはリッチな旅行者を載せた豪華客船ヴァージニアン号。当時は北大西洋航路を往復する大型客船の時代で、1912年に処女航海中に沈没したタイタニックのお話は皆さんもご存知かと。

乗客の下船後、上級船室の落し物を物色していた黒人の機関士ダニー(ビル・ナン)は、ダンスホールのピアノの上に置き去りにされた赤ん坊を見つけます。世紀末のその年から1900(=ナインティーン・ハンドレッド)と名前をつけ、船内で過酷な仕事をしながら我が子のように育てますが、ある日ダニーは事故で死去。残された1900は、船員仲間に育てられながら、アメリカとヨーロッパを往復する船から一歩も下船しないまま大人へと成長してゆきます。

ある夜にピアノに触れた彼は、持って生まれた天才ピアニストとしての才能を開花させ、無二の友人となったトランペッターのマックス(プルート・テイラー・ヴァンス)と共に、上級客向けのバンドメンバーとして、また貧しい2等船室の人々の癒しの演奏を続ける日々を送ります。

物語は数十年の時を経て2度の大戦を過ごし、老朽化したヴァージニアン号が、沖合いで爆破破棄されることになります。しかしこの船には、まだ1900が住んでいたのです。

「伝説の・・・」というくらいですから、彼のピアノはとんでもなくメローだったり、また有名ピアニストを打ち負かすほど超技巧だったりします。一人前に恋もします。しかし彼にとっては、ヴァージニアン号と航海上の海が世界のすべてであり、世間の人が世界の果てと無限の可能性を求めて漕ぎ出す海とは、「海」の概念そのものが全く異なります。

そして何よりも私がこの映画で印象に残ったのは、彼にとって音楽は、JAZZとかクラシックとかといったジャンルも、流行り廃りも関係なく、その時の最も自然な自己表現であり、目に映ったものの自然な情景描写であるということです。

マーラーは、彼の心が捉えた自然をスコアに表現したのですが、それを聴く人間も「自然」の一部でしかないとすると、マーラーと1900は同じ視点と感性を持つ人間だといえます。音楽のみならず、芸術を創造する人というのは、彼らと共通しているのかもしれません。

実話ではない分、つじつまの合わないようなところもあります。まあ、重箱の隅つつきはおいといて、人と音楽の接点を探るつもりで見れば、なかなか感じるところのある映画だと思います。逆に変な感情移入や、感動を呼ぶヒューマンドラマなどとしては見ないほうがいいのかも。

出演:ティム・ロス,プルット・テイラー・ヴィンス,メラニー・ティエリー,

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ 1999年

BOSS的には・・・★★☆☆☆

海の上のピアニスト

パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
2004-04-23
Amazon.co.jp ランキング: 3480位

おすすめ平均:4.5
5尊厳死のテーマ
5勇気をもらえる映画
4想像がつかない生き方

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