2008.07.09
REBUS 邦題:ブガッティ・ロワイヤルの女
今日のシネマは幻の1本。というのは今から20年ほど前の映画なのですが、現時点でDVD再販されていない。かくいう私もかつてテレビ放映されてビデオに録画したものをDVD化したものしかありません。
12月、クリスマス・イルミネーションに輝くパリの街に、一人の青年が列車でやってきます。バスク人のラウルと名乗るその若者は、「ブガッティを求む 迷い象」という新聞広告を出した修理工場を営む初老のカラバスを訪ねてきます。大枚を銀行でおろしたカラバスは、若者とともにシトロエンに乗って、ブガティのあるというピアリッツを目指しますが・・・。
と、物語は30年前にタイムスリップします。バーで一人、グラスを傾ける若きカラバスのところに、立派な身なりをした夫人がやってきて、「ピアリッツへ行きたいので、車に同乗して欲しい」と告げます。「殺される・・・」とも・・・。
彼女の名はミリアム。ドゥ・テライユ伯爵夫人であり、夫の政治的な画策に加担するため、夫に代わってパリからピアリッツに行く使命を帯びていました。当時のフランコ政権に対抗するバスク民族主義の戦いです。
結局道中の運転と、ピアリッツからサンセバスチャンまでのラリードライバーを引き受けたカラバス。なにせその車が、27年製ブガティ・ロワイヤルだったのです。
このブガッティ社のロワイヤルという車、当時たった7台しか生産されておらず、30億円ほどするそうです。全長6m超、車重3.2トン、OHC-8気筒で13000cc(1気筒あたり1600cc!!!)、300馬力、最高速度200km/hって、いかがなものでしょうか?。
そして、予定の旅程をはずした二人は恋に落ちます。それは結局、がんじがらめの宿命の中で、本当の自由、自らの夢を世に問いかけるための、彼女の仕掛けたある意味、罠でもあったのです。
一方の現在のカラバス、ちょっと怪しげな青年ラウルとの旅が、30年前のミリアムとの命をかけることになる愛の旅と重なります。ラウルが、かつてプルーストを研究してたなんて下りは、ちょっと笑えます。本当にフランス人って、愛国精神すごいんだから!
30年前の見果てぬ夢を振り返り、カラバスがつぶやきます。
「来た道が飛び去り 不意に
目の前が開ける
そんな時 人生を思う
自分の怠惰さ 凡庸さを
そして後悔の念にさいなまれる
飛び去るままにした愛
本物の愛」
これが謎々の問いなのでしょうか?
映画のラスト。無事ピアリッツについたカラバスは、ラウルから象の飾りのないブガッティを受け取り、別れの時が来ます。ラウルとは一体何者なのか・・・その答えは・・・。
全編に、コルトレーン、チェット・ベイカー、ビリー・ホリデー、ニーナ・シモンが流れます。何もかもがフランス映画です。いや、ブガッティが本物だとしたら、かの車が走り回ること自体はハリウッド的かも・・・。
是非是非、DVD化して欲しいものです。今でも、日テレの資料室あたりにはあるはずなのですが・・・。どうしてもご覧になりたい方は要相談、もしくは新聞広告で「ブガッティを求む 迷い象」と・・・。ちなみに原題の「REBUS」とは、謎解きの絵のこと。まさしくそんな映画です。
出演:シャーロット・ランプリング,クリストフ・マラヴォワ,ジャック・アーリン,マッシモ・ジロッティ
監督:マッシモ・ググリエルミ 1989年
BOSS的には・・・★★★★☆