2008.07.18
STAMPEDE by The Doobie Brothers (1975年)
今を遡ることうん十年。受験を目前に控えた高校三年の夏。昼間は寝て、夜中から朝にかけて虫の音を聴きながら机に向かう、高校生活最後の夏。
ある夜、FMから流れてきたのは、まごうことなきアメリカンロック。ベースラインが印象的な、軽快でかつタイトなリズム感が強く、アコースティックの透明感もあるロック。それが、ドゥービー・ブラザーズの「スタンピード」でした。
早速、地元のレコード屋さん(!)に注文して(!)LPレコードを入手。なにせ、田舎なものなので、よほどのバンドじゃないと在庫など置いていませんでしたので。
それからというもの、夏の間中、レコードが擦り切れるほど聞きました。いや、秋になり、周りの田んぼが一面黄金色に輝く頃になっても・・・。
当時のメンバーは、
Tom Johnston (Guitar, Vocals)
Patrick Simmons (Guitar, Vocals)
John Hartman (Percussion, Drums)
Keith Knudsen (Drums)
Tiran Porter (Bass, Vocals)
Jeff Baxter (Guitar)
それまでの、ツイン・ギター&ツイン・ドラムスに加え、このアルバムからスティーリー・ダンのメンバーだったジェフ・バクスターが参加し、なんとトリプル・ギターなのです。でも、「3本のギター!」というような、異様にやかましくは決してありません。ヘビメタではありませんので!
むしろ、ジェフのペダル・スティールは、3曲目「Texas Lullaby」のようにアルバムジャケットのような西部開拓時代のララバイを提供しています。
なによりもまず私の耳に残ったのは、タイラン・ポーターの縦横無尽に駆け回る、音としては硬質のベースラインでした。また、キーボードにはリトル・フィートのビル・ペインが参加、彼の鍵盤からは確かに、かすかな南の香りがします。
ただ全体的には南部のブルース系というよりは、西海岸のC&W風の音作り。アコースティックギターのインスツルメンタルも2曲入っています。やつら、うまいです。
ボーカルは、野太いトム・ジョンストンのリズム感のある曲と、細くクリアーなパット・シモンズのメロディアスな曲が組み合わされ、ストリングスとカーティス・メイフィールドやニック・デ・カロのセンスのよいアレンジも功を奏して、C&Wの泥臭さ田舎臭さは希薄です。
9曲目の「Rainy Day Crossroad Blues」では、ライ・クーダーが華麗なスライドギターを披露していて、これもファンには聞き物。
折りしもバンド自体が、それまでのドゥービー節と言われる、ギター「シャカン、シャカン」から、ポップで洗練されたものに移行しつつある時期。実際、この次の6枚目のアルバムからは、トム・ジョンストンに変わり、これもスティーリー・ダンから参加したマイケル・マクドナルドが曲を提供し、ボーカルをとるようになり、バンドは一気に大草原からシスコの顔に変わります。
当時、アルバムのラストの曲は、次のアルバムの予告となるような造りの曲が入っていることが通例でした。あたかもドラマの予告編のように、当時の私たちはラストの曲を聴いて、次のアルバムでの彼らの変化を期待して待つわけです。
このアルバムのラストの曲は、「Double Dealin' Four Flusher」、明らかにこれまでの延長線上である1曲目、ビル・ペインのラグタイム風のアコピから始まる「Sweet Maxine」とは、世紀が違うくらい曲調が違います。このアルバム一枚の中に、11曲の綴れ折の中に、驚くほどの変化が刻まれているのです。
そういう過渡期の美しさ、さまざまな要素とテイストが混在した、しかし基本はしっかりとロックのこのアルバム。私自身が、田舎で生まれ育ち、そこでの学生生活から東京に出てゆくという過渡期と重なり合った、生涯近しく付き合うことになったアルバムを、今日はご紹介しました。
Warner Bros.
1994-05-26
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Tom and Patの完成品
ちょっとだけアレンジに凝ってみました、ってかな?
これこそドゥービー!
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