2008.07.12
The English Patient 邦題:イングリッシュ・ペイシェント
「○○、ラブホに入って一軍入れず!」なんて見出しが躍ってます。超高級ホテルで行われたサミットの話題をすっかり食ってしまった一泊9800円ラブホの話題、テーマは不倫です。そして、今日ご紹介するこの映画も、まあいわば男女の不倫を描いたものなのですが、この前の「こわれ行く世界の中で」に遡ること10年前のアンソニー・ミンゲラの描く不倫の世界は、人の命を遥かに超えた「至上の愛」の物語でもあります。
第2次世界大戦当時、1944年のイタリア。イギリス軍の野戦病院に、全身にやけどを負い生死を彷徨うひとりの患者が運び込まれます。恋人だけでなく親友までも戦争で失い絶望の淵にいた看護婦のハナ(ジュリエット・ビノシュ)は、移動する部隊を離れ、廃墟と化した修道院に彼を運び込み、献身的に看病を続けます。やがて、断片的に蘇る記憶から、彼が語った物語は・・・。
彼の名はアルマシー(レイフ・ファインズ)。ハンガリーの伯爵の家柄に生まれた彼は、英国地理学協会に加わり、サハラ砂漠の地図作成に没頭していました。協会のスポンサーとして夫ジェフリー(コリン・ファース)とともに現地を訪れた妻のキャサリン(クリスティン・スコット=トーマス)は、夫の帰国後も砂漠に残ります。
遺跡調査の帰路、猛烈な砂嵐に襲われた一行は、奇跡的に生きてカイロに戻りますが、生死を彷徨った男女がそうなるであろう通りに、二人はアルマシーの部屋で激しく愛し合います。このシーンがまたいい!ミンゲラっぽいです。
って、あらすじはこの辺でやめといた方がいいでしょうネェ〜。とにかくご覧になってない方は是非是非。
確かにね、道ならぬ恋は道徳的に限定すればダメですよ、はい。現実的ではありませんね。
ただ、相手が誰かの連れ添いであろうと、身分不相応であろうと、歳の差があろうと、己の存在のすべて、己の命に代えても守りたい異性がある日突然目の前に現れたなら・・・。あなたは、そんな運命の悪戯には翻弄されることなく、神に誓って正しく生きて行けるでしょうか?それとも、命や生死を超えて、その人と恋に落ちるでしょうか?
映画の後半、洞窟に彼女を残して砂漠を彷徨い、必死の思いで飛行機を調達し、彼女の元に戻った時・・・。ああ、本当にね、人生ってこんなものなんだと思い知らされます。
運命とは、これほどまでにして受け入れざるを得ないものなのでしょうか。砂漠という、人が生き、恋を育むにはあまりにも厳しく、それゆえにかあまりにも美しく雄大な大自然と、誰も止める事の出来ない大きな時代の流れの中で、大切な物を己の命とさえもひきかえる事も出来ない人間の弱さを、この映画は乱暴に投げつけてきます。
見終わったあとの、言葉にならない切なさ、これも人を愛する事の切なさのひとつなのかもしれないです。恋人たちやご夫婦に、今そうやって二人で手をつないでいられる事のなにげない、でもとても大きな幸せを是非実感してください。
ミンゲラ監督は今年3月、54歳の若さで死去。冥福をお祈りします。
第69回アカデミー賞で監督賞、助演女優賞、美術賞、撮影賞、衣裳デザイン賞、編集賞、オリジナル作曲賞、音響賞受賞。第54回ゴールデン・グローブ賞で作品賞、オリジナル作曲賞を受賞。
出演:レイフ・ファインズ,ジュリエット・ビノシュ,ウィレム・デフォー,クリスティン・スコット・トーマス,コリン・ファース
監督:アンソニー・ミンゲラ 1996年
BOSS的には・・・★★★★★
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