2008.08.04

CLASSICS

セルゲイ・ラフマニノフ 交響曲第2番 ホ短調 op.27 (1907年)

ラフマニノフはピアニストとして有名であり、またピアノコンチェルト2番、3番が有名ですが、シンフォニーの2番も素晴らしいのです。いや、個人的にですが・・・。

裕福な貴族の家に生まれたセルゲイでしたが、農奴開放政策により9歳の時に家は破産、両親も離婚し、彼はペテルブルグ音楽院に寄宿します。その後、モスクワ音楽院に入学、スクリャービンと机を並べ、ずば抜けて優秀だった二人は、卒業時の金メダルも分け合います。

その後、24歳の時に第1交響曲を作曲しますが、初演で酷評され極度のノイローゼにかかります。彼を立ち直らせたのは、精神科医ニコライ・ダーリとの出会いであり、「あなたは素晴らしいピアノ協奏曲を作る」という暗示療法を行って作曲されたのが、かの有名な「コンチェルト2番」。

その6年後に書き上げられたのが、今日ご紹介する第2交響曲です。コンチェルト第2の大成功にもかかわらず、次ぎの交響曲まで6年もかかったのは、あまりに第1交響曲の評価とその後の精神状態が厳しかったからでしょうか?

さて、第2交響曲ですが、伝統的な交響曲の規範から言えば、それなりの評価なのかもしれません。しかし、その調べの中には、あのコンチェルト2番で表現された、セルゲイのほとばしるロマンチシズムと、ロシアの大地を彷彿とさせる、チャイコフスキー直系の民族主義作曲家の、シベリアン・テイストに満ち溢れています。

暗く陰鬱なイントロで始まる第一楽章は、主調であるホ短調がチャイコの5番と同じで、その延長線上にあることを暗示しているようです。しかし彼はチャイコのようにモチーフを固定観念としては使用せず、音楽的な循環主題として用いており、そのことにより26分にも及ぶ「嵐のような葛藤と静謐な幻想とを行き交う」楽章を構築しています。

第二楽章は、吹雪の中、シベリア大平原をソリで疾走するかのような印象的なスケルツォで始まります。吹雪もおさまり、やがてバイオリンが穏やかな表情を垣間見せますが、すぐに、あたかもマーラーの突破のような波がやってきます。この対比がまたいいのです。ロシアの作曲家でしか作りえない楽章です。

そして、マーラ5番のアダージェットにも負けないほどのロマンティックな第3楽章アダージョ。バイオリンの甘美な調べの狭間で、クラリネット、オーボエ、イングリッシュホルンが悲しげな夢を語ります。ラフマニノフの繊細な筆の結晶です。手はかなり大きかったようですが・・・。

終楽章は、これまでの動機や主題の集大成。勢いのある楽想や行進曲調、また甘美な旋律の回想など、走馬灯のように現れては消えてゆきます。そして、第一楽章で呈示された暗く湿ったテーマは、最後には鐘の音を伴い「命の勝利」へと昇華してゆきます。

CDは、ピアノ曲ではありませんが、まずはアシュケナージ指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団1988年録音をお勧め。若きアシュケナージが、ロシアらしいテイストと華麗な演奏を披露しています。

変わったところでは、ザンデルリンク指揮フィル・ハーモニア管弦楽団を。なんとなくチャイコではなくブラームスっぽく聞こえるのは気のせい?打楽器など、低音と打楽器のしっかりとした、輪郭のあざやかなラフマニノフです。

ラフマニノフ:交響曲第2番

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おすすめ平均:5
5包み込まれるような演奏。癒しよりも慰めを



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ラフマニノフ:交響曲第2番

ワーナーミュージック・ジャパン
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おすすめ平均:5
5ラフマニノフ 交響曲第2番 ザンデルリンク
5ロシアと英国の美しい融合
5落ち着いた演奏です

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