2008.08.26
Love is A Many Splendid Thing 邦題:慕情
朝鮮戦争直前の香港を舞台にした、悲哀物語。主人公であるハン・スーイン女史の自伝を元に映画化されたものです。
第2次世界大戦直後の香港は、大戦後の活気と共に中国の共産化の波に揺れ動いていました。中国人の父とイギリス人の母を持つ混血の女医ハン・スーイン(ジェニファー・ジョーンズ)は、中国人であり国府軍の軍人だった夫を共産軍との戦でなくし、香港の病院に研修医として勤めていました。
亡き夫への忠節を誓いつつ医療に没頭する彼女の前に、ある日米国人特派員のマーク・エリオット(ウィリアム・ホールデン)が現れます。既婚者であるマークに対し、最初は警戒心をあらわにしていたスーインでしたが、彼らを引き合わせる強い運命に引きずられるように、やがて二人は恋に落ちます。
既婚者と未亡人の恋。今でも道ならぬ恋に違いありません。それがどうしても許せない方には、決して入り込めない映画。もったいない・・・。
中国人としての貞節と西洋人としてのロマンティックな感情の間で激しく揺れ動く女心を、ジェニファー・ジョーンズが見事に演じきっています。病院の通用口にマークに送られて帰ってくる彼女のシーンが何度かあるのですが、度ごとに彼女の心情は大きく異なる。それがしっかりと伝わってきます。
台詞もキザ!と言えばそれまでなんですが、今頃のお手軽映画にはまずない、文学的な表現言い回し。スーインの「結婚は問題ではない。私たちの愛こそ大切。」と言う台詞も、人を愛すること、恋の本質をついています。「愛は問題ではない。結婚と将来こそが大切。」と信じて生きている人の多いこの世の中で・・・。
これを、「今どき、アホくさっ!」と思われるバリバリの現代人の方は、残念ながらこの頃の映画は全く理解できないと思います。
美しい香港を舞台に、純粋に相手を求める二人。彼らを包み込むような印象的な主題歌(サミー・フェイン作曲、フランシス・ウエブスター作詞)。この曲は、ジョン・トラボルタとオリビア・ニュートンジョン主演の映画「グリース」にも使われていましたね!
ある愛の詩の一節、「愛とは決して後悔しない事」。スーインの心には「きらきらときらめく、沢山の愛」が、そっと埋め込まれたのでした。
出演:ジェニファー・ジョーンズ,ウィリアム・ホールデン,イソベル・エルソム,ジョージャ・カートライト,トリン・サッチャー
監督:ヘンリー・キング 1955年
BOSS的には・・・★★★★☆