2008.08.29
座頭市
座頭市と言えば、勝新太郎。こいつは純粋に時代劇です。ただ、木枯紋次郎や子連れ狼と共に、新しい時代劇のプレゼンテーションでした。そしてまた、我が国屈指の異色コメディアン北野武が提示する、新たなプレゼンテーションは、フランス的な血の香りのする時代劇でした。
ある日、とある宿場町にやってきたのは、金髪で朱塗りの仕込み杖を持つ盲目の居合いの達人、ご存知、座頭市(ビートたけし)。また、病弱の妻おしの(夏川結衣)を連れた、浪人の服部源之助(浅野忠信)。そしてもう一組、旅芸者のおきぬ(大家由祐子)とおせい(橘大五郎)の姉妹。
妻の薬代の為にとやくざの用心棒になる没落浪人と、両親の命を奪った宿敵を捜し求める姉妹。そこに座頭市がからんで、運命と謎の糸が絡みあい、一点に重なった時、壮絶な修羅場の幕開けとなります。
座頭市は、基本的にアウトローです。ただし、「渡世の義理」がなければ自ら進んで人を殺めたりはしない。この辺は、紋次郎のキャラと似ています。今回の市っあんは、不遇な姉妹のあだ討ちの加勢というところが、ややプロット的に微妙なのですが、親を惨殺された子供たちのあだ討ちだとか、恥をかかされた仕官武士の意地といった、使い古された構図を重ねることで陳腐さも薄められ、破綻も見せずに自然に物語が進みます。
こういうことって実はすごく大事なことで、なんとなく「何でだろう・・・」って思い始めると、もう物語は一気にプラスティック臭くなってしまう。
それにしても強い。市も源之助も。カメラワーク、アングルも見通しよく、舞うような殺陣が繰り広げられます。まるでホラー映画の如く、飛び散る血潮。しかし銀残し処理により、それほどグロさは感じない。むしろ、そのせいで抑えられたトーンは、悲惨な現場を夢物語のように、あるいは記憶の中の出来事のように見せてくれます。
最強の二人の大一番も、なかなかうまく描かれています。まさか、巌流島の決闘みたいにやるわけにはいきませんからねぇ〜。
間を持たせるためとは思えませんが、ややスローモーションが多かったかな?舞踊のシーンも、私的にはちょっと長くて、2回目からは「早送り」を探してしまいます。
それにしても北野監督、私の好きな俳優さんをよくも集めたもんだなぁと関心します。私に似てると一部で噂の浅野忠信に岸部一徳、柄本明、樋浦勉などなど・・・。おしの役の夏川結衣も、好みぴったんこでうっとり見れます。キャストはとっても大事です、はい。
キルビルやニキータのアクションに、プラネット・テラーのライブ感とコミカルをぶちこんで、エキセントリックに描きあげた時代劇ミュージカル。灯篭真っ二つには、笑ってしまいます。
映画好き、もしくはアクション映画ファンに。ミュージカルがお好きな方も、ぜひご試食ください。
出演:ビートたけし,浅野忠信,夏川結衣,大楠道代,橘大五郎,大家由祐子,ガダルカナル・タカ,岸部一徳,石倉三郎,柄本明,樋浦勉
監督:北野武 2003年
原作:子母沢寛
BOSS的には・・・★★★★☆